日本列島の形成過程を明らかにする為には,地殻構造を高分解能で把握する事が重要である.そこで,制御震源・自然地震の稠密地震観測データを用いた高分解能イメージング手法の開発を行なった.自然地震データに対して地震波干渉法解析を適応することで作成した合成波形データや制御震源データを用いて地殻構造のイメージングを行なう場合,解析対象地域下の地震波速度構造を精度よく把握することが重要である.また,観測される自然地震の波形には,震源と観測点の間で方位角依存性がある為,自然地震データを用いる場合には,このような違いを補正することも必要である.最終年度は,平成24年度に東北地方南東部で実施された稠密地震観測「相馬―米沢測線」で取得されている自然地震データに対して,各地震のメカニズム解を考慮することに加えて,地震波トモグラフィー解析を適応することで得ていた地震波速度構造も考慮した振幅補正後の地震波形データに,地震波干渉法解析を適応することで作成した,全ての観測点位置を仮想発震点・仮想受振点とする稠密合成波形データを用いてイメージングを試みた.また,「相馬―米沢測線」で得られている制御震源データに対して,散乱法解析を適応した.このような制御震源・自然地震データのハイブリッド解析を行った結果,双葉断層の深さ約15kmまでの形状や,深さ25-30km付近に位置する島弧モホ面の形状など,地殻全体の構造を高分解能で把握する事ができた.これらの結果は,地殻の形成過程を考える上で重要な地震学的拘束条件となる.また,本解析手法を,2014年に長野県北部で発生した地震の余震観測データに対しても適応し,地殻内の反射イベントに関する知見を得ることが出来た.このことは,本研究で開発した解析手法が,地殻構造を高分解能で把握するのに有効であることを示している.
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