平成26年度には次の研究を行った。[1]本研究で構築した東日本地域の陸海統合3次元構造モデルの妥当性を検証するために、破壊過程が単純な小地震記録の再現を試みた。強震動グリーンテンソル関数波形の生成には上記の陸海統合3次元構造モデルをそのまま利用した。遠地実体波グリーンテンソル関数波形の生成では上記の陸海統合3次元構造モデルから2次元構造断面を切り出して、23個の2.5次元構造モデルを構築したものを利用した。これらのグリーンテンソル波形と、我々が開発した点震源の非線形モーメントテンソル・インバージョンの手法とを用いて、東北地方太平洋沖地震の震源域で発生した浅い小地震(2003年11月1日、Mw5.8)の解析を行った。周期帯は強震動波形が12-100秒、遠地実体波波形は5-250秒とした。その結果、最適な点震源は気象庁震央近くに位置すること、強震動波形と遠地波形の両方で理論波形が観測波形を良好に再現すること、単純な水平成層構造モデルでは観測波形の特徴を再現できないこと、などを確認した。これらにより構築した3次元構造モデルと波形計算手法の妥当性を確認できた。[2]周期帯を上記のように確認できた帯域に制限したうえで、東北地方太平洋沖地震の破壊過程の再解析を行った。解析にはマルチタイムウィンドウ型の非負・非線形インバージョン法を適用した。その結果、震源付近にすべり量の大きな領域を持ち海溝近くのすべり量は相対的に小さいという結果を得た。[3]上記で得られた震源モデルをもとにして強震動波形のフォワード計算を実施して得られた理論波形と、インバージョン解析には利用しなかった観測波形とを比較し、再現性がよいことを確認した。なお、これらの結果について日本地震学会やAmerican Geophysical Union Fall Meeting などで発表を行った。
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