研究課題/領域番号 |
24540453
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮崎 真一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00334285)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地殻変動 / 衛星測位 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
昨年度の検討結果を受け、本年度はGPSの位相データに含まれるノイズの振る舞いについて検討した。用いたデータは、過去の科研費で設置し、別の費用で引き続き運用している、八重山地域4箇所のGPSデータである。特に、黒島観測点では、校舎の改築によりアンテナの近くにマルチバス源となる柱ができた。以前は障害物はほぼない状況であったため、校舎改築前後におけるノイズの振る舞いを考察した。手法は、GIPSY-OASISソフトウェアで精密単独測位解析を行い、その残差を調査するものである。予想通り恒星日を周期とする残差成分が大幅に増加しており、測位結果にも悪影響を及ぼしていることがわかった。そこで、今年度計画していた研究計画を変更し、GPS位相データに人工的に、衛星に含まれるノイズと同程度のスペクトル特性を持つ恒星日周期のノイズを加えて、昨年度構築した解析ソフトの入力に使用した。その結果、データ中のノイズを、断層すべりとランダムウォークノイズに分離することができておらず、トレードオフが生じていること、その結果、断層すべり成分に大きな見かけの変動が出てしまうことが判明した。 また、実際の地震現象への適用を目指し、地震後の余効変動の解析を進めた。本課題では、地震直後のアフタースリップの開始過程のイメージングを目指しているが、開発予定の手法が未完成のため、今年度は2011年東北地方太平洋沖地震に伴う地震後2年半の余効変動のモデリングを行った。本課題の目標とする成果ではないが、副産物的な成果として、余効変動をアフタースリップと粘弾性緩和に分離することに成功し、アフタースリップが2年半でほぼ終息していること、アセノスフェアの粘性フローの様子をデータから求めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」の項目で述べた通り、衛星の位相データに含まれるノイズが、断層すべりと時間依存ノイズにうまく分離できていないため、これまでに開発したアルゴリズムでは原理的に目標を達成するのが難しいことがわかった。昨年度の報告書では、粒子フィルタの使用を試みる旨の記述をしたが、この問題はフィルターのアルゴリズムを変更して解決するものではない。このことは、研究当初からある程度予想していたが、ノイズの振る舞いの悪さは想定以上であったと認めざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したアルゴリズムでは、断層すべりと時間依存ノイズへの分離が原理的に難しい。そのため、研究期間を1年延長し、その対策を講じ、手法を改良する。ノイズの分離は原理的に難しいため、位相データの事前処理が必要になると考えている。現在考えている手法は、各観測点で精密単独測位を数日分実施し、その残差をスタックすることで残差マップを作成し、それを観測データから差し引くという手法である。ノイズが恒星日周期となるため、GPS解析を恒星日単位で実施することが望ましいと考えている。位相データの解析に詳しいコロラド大学の Larson 教授と議論しながら実施する。下記に可能ならある程度の期間コロラド大学を訪問して、集中的に推進したい。 それと並行し、実際の現象への適用を進めたい。最初に地震と比較してシグナルの空間的波長が短い火山現象に対して本手法の適用を行う。そのため、本課題と類似の研究を実施しているアイスランド大学の Arnadottir 博士と議論しながら進める予定である。火山で適用可能であることがわかれば、地震現象への適用も原理的には可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に海外共同研究者のもとを訪問して解析手法を完成させ、実際の観測データに適用し、米国地球物理学連合秋季大会等で発表する予定であった。しかし、観測データに含まれるノイズの振る舞いが悪く、海外共同研究者を訪問して研究を進めるに至らなかった。そのため、計画していた観測の一部や成果発表、研究打ち合わせのための旅費や、観測のための物品を購入するに至らず、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
既に述べた研究計画を効率的に実施するために海外共同研究者(コロラド大学およびアイスランド大学、進捗状況によってはスタンフォード大学)をある程度まとまった期間訪問したいと考えている。また、本年度実施できなかった観測を実施するため、観測のための物品購入や旅費が必要となる。未使用学はこれらの経費にあてることとする。
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