GPSの位相データから断層すべりが一様であると仮定した場合のすべりの時間発展を推定するプログラムを作成した。ただし、地球回転や、大気遅延をはじめとするGPSデータに含まれる各種誤差の補正をしていないため、数キロ~十数キロ程度の範囲でしか適用できない。この効用を確認するため、移動架台を用いた実験を東北大から提案をうけて検討したが、研究機関が終了となり、実験の実施とそれへの手法の応用には至らなかった。研究期間全体を通してGPS位相データの時間に依存するノイズの扱いに苦しんだ。本年度は暫定的にランダムウォークモデルを適用してプログラムを作成したが、実際のノイズの周波数依存性はよりピンクノイズに近く、ノイズの高周波成分が残ってしまう。このノイズと実際のシグナルとの分離が難しく、地殻変動が起こっていない時期の観測データを用いて行った試験解析においても、かなりのノイズ成分がシグナルとして推定されている。この扱いは今後の課題として残っている。 研究期間内には十分な検討を行えなかったが、運営費等で細々と検討を続けたいと考えている。まずは東北大の移動式架台を用い、不動基準点の数メートル横に移動式架台を設置し、膨張型の源を仮定した動きをアンテナに与えてその源の推定を実施する。この空間スケールであれば開発したプログラムが利用でき、また、基線長も短いため、GPSのノイズも小さい。そして徐々に不動基準点からの距離を長くし、GPSノイズの振る舞いの統計的モデル化を行いつつ、源推定を成功させたいと考えている。 また、本年度は昨年度に得られた副次的な成果を2つの海外学会において発表した。
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