研究課題/領域番号 |
24540454
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
村上 英記 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (10166259)
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研究分担者 |
山口 覚 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70191228)
塩崎 一郎 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80221290)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 四国 / MT応答レスポンス / 比抵抗構造 / 低周波微動 / スラブ地震 |
研究概要 |
初年度は,既存のNetwork-MTデータと広帯域MT法データの整理と解析に向けての予備解析をおこなった;1)取得済みのNetwork-MTデータ(松山,大洲,宇和,城川,土佐清水,橋上,土佐中村,大方,窪川,木屋が内,東津野,檮原,口屋内,頭集,観音寺,丸亀,高松,三本松,徳島,脇町,阿波池田,土佐山田,安芸,室戸,牟岐,阿南,丹生谷)について解析精度を上げるために時刻補正の再検証ならびに解析用フォーマット変換を実施し,広帯域MTデータについては再解析をするためにデータの再整理を実施した,2)Network-MTデータについて2次元解析に適しているデータのうち四国西部(松山,大洲,宇和島,城川)・四国中部(阿波池田・大杉・土佐山田)・四国東部(牟岐)について全ての組み合わせ(それぞれ5~38通り)について再解析を実施し,より精度の高いMT応答レスポンスを求められるデータの組み合わせを検討した,3)電車による漏洩電流の大きなデータについて多変量解析の手法などを適用し改善法の検討をした。 上記の予備検討の結果,四国西部域・中部域・東部域の広帯域MT観測で求められている比抵抗構造モデルでは下部地殻・プレート上面の低比抵抗層の存在に対する解釈に違いがあるが,Network-MTデータによる長周期側のMT応答レスポンスでは絶対値は異なるものの四国全域で類似のパターンをしている可能性があることが分った。プレート境界面付近の低比抵抗を顕著に示すパターンではなく,周期が大きくなるにつれて単調に比抵抗が増加するパターンが予備解析では得られた。プレート境界面に想定される低比抵抗層の暑さを直接に決めるデータとしてではなく上限についての制約情報として有益と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するために,初年度において1)既存データの整理,2)ノイズの大きな地域のデータについてノイズ軽減手法の検討の実施を予定した。そのうち既存データの整理については,既存データのフォーマット変換を含めて本格的な解析のための整理がほぼ実施できた。ノイズ軽減手法の検討については,部分的ではあるが解析上重要な地域のデータについてデータの全ての組み合わせについて再解析を実施することで比較的良好なデータ組み合わせを見つけることが可能な場合があり,従来の結果よりも安定したエラーバーのより小さいMT応答レスポンスを得ることができることが分った。さらに漏洩電流の大きな地域の観測データについて,多変量解析の手法やノイズの形状に着目したフィルタリングの設計などを試みて有効なケースがあることも分ってきた。これらの成果を踏まえてさらにノイズ軽減手法の改良を進めたい。 予備的な検討結果により,プレート境界にいたる比抵抗構造を精度良く求めるための方向性があきらかになった点は,予定以上の成果と考えている。限られた既存のデータを使い目的とする比抵抗構造を明らかにするためには,地震学的な成果を取り入れたフォワード計算により,モデルの制約(比抵抗値,構造)を与える方向での検討が有望であることが分った。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施したデータ整理・予備的解析・ノイズ軽減手法の検討の結果を踏まえて,Network-MTデータの本格的な再解析を実施する(2年次)。次に,既存の広帯域MTデータとの接続を検討し,地殻からプレート境界にいたるまでの精度の高い比抵抗構造の検討を実施する(3年次)。 初年次の予備的な解析により,Network-MT電場データの全ての組み合わせを検討することが重要であることが分った。単に見掛けの精度が高い組み合わせでも,同一地域の別の組み合わせでは比抵抗値が一桁程度変わる場合があるなど,データの組み合わせが極めて重要なことがわかったので,組み合わせを検討した上でノイズ軽減処理を施し精度の高いMT応答関数を求める。予備的な解析により,四国西部・中部・東部ともに絶対値は異なるもののMT応答関数の特性は類似していることがおおよそ分ってきたので,残りの地点についてMT応答関数の解析を進める。 Network-MTデータにより深部側の情報を得たうえで,既存の広帯域MT観測によるMT応答関数との接続を検討し,地殻からプレート境界にいたるまでの比抵抗構造を検討する。その際に,予備的な結果では存在するとされているプレート上面の水を表すような顕著な特性が得られていないので,存在するとしても薄い層と考えられる。そのためフォワード計算によるモデルの制約を中心として解析をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
予備的な検討により当初解析対象であった四国南西部のデータの一部(土佐清水,橋上,土佐中村,大方,窪川,木屋が内,東津野,檮原)は,電場計測のチャンネル数や方位などの理由で精度の高い2次元比抵抗解析には必ずしも向いていないことがわかったので予備的なデータとして扱うこととした。そのため予定していた解析補助・データ処理のための消耗品経費(約10万円)を次年度の解析に当てる。 予備的な解析により,ノイズ軽減処理をする前のデータ組み合わせの選択が極めて重要なことが分ったので,まだ全ての組み合わせについて検討をおこなっていない観測点について検討を実施するための経費として次年度経費に加え,ノイズ軽減処理について更に検討を実施しMT応答レスポンスを求める。
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