研究課題/領域番号 |
24540454
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
村上 英記 高知大学, 自然科学系, 教授 (10166259)
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研究分担者 |
山口 覚 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70191228)
塩崎 一郎 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80221290)
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キーワード | 四国 / MT応答レスポンス / 比抵抗構造 / 低周波微動 / スラブ地震 / フィリピン海プレート |
研究概要 |
平成25年度は,平成24年度に実施したNetwork-MT観測データ整理とそれを使った予備的なMT応答レスポンス解析の結果及び開発中の漏洩電流による影響の軽減手法の成果を踏まえて次の2点について検討を行った:1)四国西部並びに四国中央部の観測点について精度を高めるための検討を行った,2)比抵抗フォワードモデルによる地殻下部・上部マントル比抵抗構造特性について検討を行った。 初年次では,四国西部の観測点のうち松山・大洲・宇和・城川について,四国中央部では阿波池田・大杉・土佐山田について各観測点における全ての電場測線の組合せを検討し,比較的精度の良いMT応答関数が得られる組合せがあることが分かったが,いずれも午前1時~6時の間の電車による漏洩電流の小さい期間のみを使用した場合であった。この場合には,多くの観測点で精度良く求められるMT応答レスポンスはせいぜい数百秒程度までで,1000秒までは延びていない。時系列に主成分分析を適用し1000秒近くまで比較的連続性の良いMT応答レスポンスを得ることができる観測点があることが分かった。しかし,阿波池田などはまだ95%信頼区間の幅が広く改善の余地が残されている。更に瀬戸内側の観測点については,夜間値のみでもバラツキや信頼区間が大きく目指す精度には達していないために,ノイズ特性を考慮して季節調整の手法を導入した改善策の検討も始めた。 上述の比較的精度の良いMT応答レスポンスの得られた四国中央部についてフォワードモデルによる理論計算を実施し,地殻下部・上部マントルの比抵抗値の制限について検討した。その結果,従来モデルで得られていた下部地殻10kΩmという高比抵抗層の存在は必ずしも必要ではないことが分かった。これを明確にするためには,周期数百秒から1000秒にいたるMT応答レスポンスの精度をさらに上げる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度(2年次)には,初年次の予備的な成果を踏まえてNetwork-MTデータの再解析を進めることを計画した。その内,四国西部及び四国中央部については測線の組合わせとノイズ軽減手法を導入し,従来の生データをそのまま用いた解析ではバラツキが大きく信頼区間も極めて大きかった観測地点のMT応答レスポンスについて改善できた。 また,それだけでは改善できないデータについては新たに季節調整手法を用いた手法を適用し改善できないかを検討し始めた。これらの手法で,漏洩電流の極めて大きく従来は手つかずの瀬戸内側のデータについて検討を始めている。四国東部では瀬戸内側を除けば,比較的良好なMT応答レスポンスが従来手法で得られているので,新たなノイズ軽減手法の検討により改善する観測地点が増えれば比抵抗構造に対する制約がより広範でより確かなもになると期待される。 精度向上の見られた四国中央部のMT応答レスポンスと比較して,四国中央部の地殻下部・上部マントル比抵抗構造について制約を検討するために,比抵抗のフォワード計算ができるようにプログラム(Uchida and Ogawa,1993)とメッシュデータを準備することができた。まだ予備的ではあるが,四国中央部の下部地殻比抵抗について従来モデルで提案されている10kΩmという高比抵抗ではなくもっと低い可能性があることが得られたことは2年次の重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
最終的な目標である「四国下フィリピン海プレート周辺部の高比抵抗構造の決定」に向けて,次の方針で解析を行う。まず,MT応答レスポンスの改善がある程度行えた四国中央部並びに四国西部における比抵抗構造に関してフォワードモデル計算により比抵抗値の制約を行うことを優先的に行う。両地域は,従来の研究ではプレートにいたるまでの比抵抗構造が十分な精度では求められていない地域である。次に,ある程度の精度で求められていると思われる四国東部についても妥当性を検証する。フォワード計算においては,近年詳細が分かってきた地震学的な情報(プレート構造,スラブ地震の発生領域)を考慮したモデルにて検討を行う。 低周波微動発生領域の比抵抗値を制約するためには,極めてノイズの大きな瀬戸内側の観測点におけるMT応答レスポンスの精度を上げる必要がある。現状では必要な精度にまで達していないが,新たに進めている処理方法を更に発展させ少しでも精度を高めることを目指す。また,上部地殻については低比抵抗であることが従来の研究でわかっているが,深部構造の精度を上げるためには高周波側のMT応答レスポンスも必要である。これについては,広帯域MTデータとNetwork-MTデータでMT応答レスポンスを求める目途もある程度たっているので,統合的な解析をすすめ精度の向上を目指す。
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