研究課題/領域番号 |
24540455
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小玉 一人 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (00153560)
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研究分担者 |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部自然科学系, 助教 (00452699)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 岩石磁気 / 地球環境 / ナノ粒子 |
研究概要 |
本研究の基礎となる磁性ナノ粒子の交流磁化周波数依存性に関する理論的考察と基礎実験を行った。その結果、複素磁化率の実数成分を100 Hz~500 kHzの広帯域で測定することにより、磁性ナノ粒子のサイズ分布を推定できることがわかった。この方法は、特に中国黄土層など、ナノ粒子を比較的多量に含む試料において有効であり、その周波数スペクトルから導かれるパラメータが高分解能の気候変動指標となる可能性が高いことが判明した。一方、火山岩を対象とした同様の研究から、一部の試料に磁気共鳴現象と思われるスペクトル異常が存在することがわかった。この現象は、これまで知られていない磁気特性で、一般的な組成の陸上火山岩に普遍的に存在する可能性が高い。低温測定結果と総合的に検討した結果、多磁区粒子の磁壁振動に起因する熱磁気緩和現象と密接に関連した、新たな磁気共鳴現象と推定される。 これら一連の実験の基礎となる磁化率測定機器は、ロックインアンプ以外はすべて自作し、試料の磁化率特性に応じた最適の検出コイル系を用いることによって、感度の向上を図った。これまでの結果から、100 kHz以上になるとS/N比が悪化する傾向があり、これは使用するロックイン検出器の限界でもある。PLL回路を利用した共鳴発振周波数型のコイル検出系を検討する必要がある。なお、これらの結果の一部は、以下の論文に印刷公表した。 Kodama, K., 2013. Application of broadband alternating current magnetic susceptibility to the characterization of magnetic nanoparticles in natural materials, Jour. Geophys. Res., 118, 10.1029/2012JB009502
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後の展開へ向けた基礎理論の構築と実証実験をほぼ計画どおりに完了した。これらの結果は国際学会(AOGS2012)で講演発表するとともに、国際誌(上記)に印刷公表した。理論的考察と並行して測定機器の開発を行い、基礎データを取得可能なプロトタイプの製作はほぼ当初目的どおりに進行した。初年度は理論研究に重きをおいたため、機器開発はプロトタイプ製作にとどまらざるを得なかった。ただし、事前の予想よりも高い周波数帯域での測定が重要で、このような高周波域で高精度測定可能なロックインアンプが市販されていないことが課題として残された。これを解決するための方策として、PLLフィードバックと高分解能カウンターを利用した共鳴発振型の高周波検出コイル系製作が有効であろう。いずれにしても、今後の応用研究でのルーチン測定に耐える機器設計に必要なノウハウを蓄積することができたので、次年度以降は計画に沿った研究展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)ルーチン測定に適した計測器の開発。100個単位の試料を処理可能な自動サンプルハンドラーと検出コイル系の製作。 2)中国黄土層を対象とした環境磁気学的研究。Kodama(2013)によって明らかになった黄土層のナノ磁性粒子特性をもとに、最終氷期・間氷期の高解像度環境変動を復元可能な複数サイトの相互対比を行う。 3)2013年9月に予定されるIODP Exp.346(日本海・東シナ海)掘削試料を対象とした環境磁気学的研究。上記の陸上黄土層の結果と比較検討するため、当該年代の海底堆積物を測定し、東アジアのダスト伝搬・供給源推定のための基礎データを得る。 4)ナノ磁性粒子の総量に相当する磁性パラメータ決定に特化した簡便な測定機器の開発。Kodama(2013)によれば、黄土層中のナノ磁性粒子(超常磁性粒子)は約500 kHz以上で周波数依存性を消失し、磁気的に安定な単磁区粒子的振る舞いを示すようになる。このことから、~100 Hzと~500 kHzの高低ふたつの周波数での測定値を用いるだけで、ナノ磁性粒子の総量を決定することができよう。
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次年度の研究費の使用計画 |
主たる支出費目は、測定機器開発のための消耗品・ルーチン計測補助の非常勤雇用謝金・研究試料採取旅費・内外学会参加費などである。現段階では、高額測定器の購入は予定していないが、研究の進展によっては既存測定器(ロックインアンプ・デジタルオシロスコープ)のオプション部品として若干の支出が必要になるかもしれない。消耗品費は、低温測定用液体ヘリウム・高周波用コイル線各種・特殊非磁性樹脂・精密加工委託製作・金属加工工作部品等の購入にあてる。試料採取旅費としては、黄土試料採取のための旅費支出を予定しているが、連携研究機関(中国科学院地球環境研究所、西安)の協力によって試料を入手できる可能性がある。内外学会発表はすでに、JpGU2013(千葉)およびAOGS2013(Brisbane)参加が決定しているほか、AGU fall meetingへの出席も予定している。非常勤雇用は前年度に引き続き、ルーチン計測および測定器製作の補助にあてる。
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