研究課題/領域番号 |
24540459
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
和田 浩二 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (10396856)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 天体衝突 / 数値シミュレーション / 粉体 / 小惑星 |
研究概要 |
小惑星表層は微小重力下の高空隙粉体層である.そこに刻まれるクレーターなどの天体衝突過程を明らかにし,小惑星進化に及ぼす天体衝突の影響を評価することが本研究の目的である.具体的にはこれまで行ってきた粉体層への衝突シミュレーション手法に粒子間付着力モデルを導入するなど改良・発展させ,微小重力下高空隙粉体層への衝突シミュレーションを行い以下の素過程を明らかにする. 今年度は天体衝突時の粉体層への貫入過程について,室内実験との比較を通して明らかにすることを目的に数値シミュレーションを行った.具体的にはこれまでに準備した粉体層における弾丸貫入・掘削流のシミュレーションを室内実験と同じ条件で行い,結果を比較した.結果的に,弾丸貫入時には衝撃波様の波の伝播や孤立分離波の伝播といった粉体特有の現象が観察された他,弾丸速度の2乗に比例する抵抗ならびに弾丸速度に比例する抵抗が貫入時に生じることが確認され実験とも調和的であることが確かめられた.また,この貫入抵抗は粒子間相互作用をあらわすパラメータによらないことが示され,様々な粉体状況への適用可能性が示された. また,小惑星表層を形成する高空隙粉体層について,その起源となるダストの衝突合体成長過程からの理解についても進んだ.すなわち,もともと空隙率の非常に高いダストがその空隙率を保ちながら微惑星や小天体にまで合体成長することが理論的に可能であることが示された.したがって,本研究で取り組む課題とその結果は,小惑星のみならず,微惑星形成をも含む惑星形成論においても広く応用が可能であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の当初計画では,重力・粒子間相互作用パラメータを振ってさまざまな空隙率をもつ粉体層を作成すること並びに衝突シミュレーションの予備的計算を行う予定であった.衝突シミュレーションの予備的計算に関しては,室内実験との比較も行うなど数値シミュレーションの妥当性を評価し貫入抵抗過程を明らかにするなど当初予想より大きな収穫が得られた.一方で,さまざまな空隙率をもつ粉体層の作成はようやく着手した段階であり,このことから「やや遅れている」と判断するに至った.しかしながら,粉体層の作成には目途がついており遅れを十分挽回することが可能である.したがって,計画全体の遂行には問題ないと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
まずは昨年度末から着手している小惑星表層を想定した高い空隙率を持つ粉体層の作成シミュレーションを行う.具体的には重力下において粒子を上方からランダムに降らせ堆積させることで粉体層を形成する.粉体層の空隙率に関しては,粒子間付着力および転がり抵抗と重力との比が重要であることが知られている.低重力環境(1G~マイクロG)下,粒子間付着力および粒子間転がり抵抗を調節することで,様々な空隙率をもつ粉体層の形成が可能である.さらに形成した粉体層への衝突シミュレーションを行う.今年度の成果として得られた粉体層における貫入抵抗則がさまざまな粉体層においても成立するかを確認することを行うとともに,クレーター形状や放出されるイジェクタ量についても,衝突パラメータを振ってその依存性を明らかにする.そのうえで,小惑星表層上における衝突過程に対するスケーリング則の構築をめざす.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度購入した高速計算機システムを活用して次年度以降数値シミュレーションを行っていくため,次年度以降大きな物品の購入は必要ない.次年度の研究費はもっぱら研究成果の発表や室内実験研究者等との議論を行うための旅費,並びに消耗品購入に充てる予定である.
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