研究課題
小惑星表層は微小重力下の高空隙粉体層である.そこに刻まれるクレーターなどの天体衝突過程を明らかにし,小惑星進化に及ぼす天体衝突の影響を評価することが本研究の目的である.具体的にはこれまで行ってきた粉体層への衝突シミュレーション手法に粒子間付着力モデルを導入するなど改良・発展させ,微小重力下高空隙粉体層への衝突シミュレーションを行い以下の素過程を明らかにする.今年度は衝突標的である粉体層の形成を中心に展開した.粒子法の一種である離散要素法(DEM)により,低重力のもと多数の粒子をランダムに自由落下させることで衝突標的となる粉体層を形成した.低重力下での自由落下による標的作成は相当な計算時間が必要であった.重力ならびに粒子間相互作用を変化させることで,空隙率の違う標的粉体層を構築することができた.最終年度ではこれら形成された粉体層において衝突の数値シミュレーションを行う予定である.また,小惑星表層を含め高空隙粉体層における衝突において,放出物の量がどれくらいになるか,といった放出過程も惑星形成・小惑星進化過程に重要な素過程である.空隙率85%程度のBPCA構造をもったアグリゲイトの衝突を行った結果,放出物の量は衝突弾丸の運動量に比例することが明らかになりつつあり,小天体の進化過程にインパクトを与えるものと考えられる.さらに,小惑星表層環境におけるダストの振る舞いや付着力に関する理論的推察も行い,小惑星表層進化に関する総合的な知見を得ることができた.
2: おおむね順調に進展している
本研究で必要となる小惑星表層を模擬した粉体層の形成を行い,本格的な衝突シミュレーションを行う目途がたったこと,さらにアグリゲイト衝突のシミュレーションから放出物量の衝突条件依存性が明らかになりつつあり,その解析手法とともに次年度に十分な成果が得られることが期待されること,から順調に進展していると考えられる.
25年度に作成した粉体層の性質(音速など)を精査したのち,必要ならばさらに粉体標的層を作成して,それらに対する衝突シミュレーションを行う.衝突クレーター形状やイジェクタ量に関して衝突条件や重力および粒子間相互作用依存性を明らかにしたうえで,小惑星表層における衝突過程モデルを構築する.
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