川井型装置を用いて高圧下の熱伝導率と熱拡散率の測定実験を継続した。8面体圧力媒体の1辺の長さ14 mm、アンビルの切り落とし長さ7 mmとした。この大きさの圧力媒体とアンビルでもって18 GPaを超え25 GPa付近までの圧力での測定が可能と考えられる。ほぼ毎回起きていた超硬アンビルの破損は、加圧プレスを別のものへの切り替えで避けることができた。プレスの相対する面の平行度の問題であろう。ただし現時点では目標としていたマントルの遷移層の高圧鉱物(ウォズレアイト、リングウダイト、メジャライト、ブリジマナイト)の測定には至っていない。 また、カンラン石とガンカ輝石の測定を行った。カンラン石では加圧の途中でその高圧相に相転移させそのまま測定できるかどうかを試みることを目的にした。輝石については、ヒスイ輝石-透輝石系の測定結果は得ていたものの、上部マントルの重要なMg-Fe系輝石のデータが欠けているので、ガンカ輝石の単結晶を用いて実験をした。カンラン石では、これまでの結果とくらべて熱拡散率の圧力依存性が小さすぎ、熱伝導率の値はやや大きく出た。ガンカ輝石については常圧での既存値から推定して値が大きすぎるのではないかという結果であった。また、両者とも測定値の暴れが大きい。要因として、試料の熱時定数が小さくなれば時間軸上でパルス加熱点に近づいたデータを使うことになり、パルス電流の誘導が測定値に響いてくることが考えられる。現行の測定回路装置を用いては、一概に熱伝導の大きい高圧鉱物の測定が難しくなると思われる。パルスからの誘導を大幅に減らすなど測定装置の改良が必要である。 本平面加熱非定常法は、高圧での地球深部物質の熱伝導測定について信頼できる方法として確立したものと思われる。今後は国内外に共同研究者の範囲を広げ、前述の高圧鉱物をおのおの分担して測定を進めて行くことになろう。
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