研究課題/領域番号 |
24540464
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
大堀 道広 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 准教授 (50419272)
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研究分担者 |
CITAK Seckin 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (50581518)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経験的グリーン・テンソル / 強震動予測 / 震源メカニズム解 / モーメント・テンソル / 経験的グリーン関数 |
研究概要 |
本研究では、「経験的グリーン・テンソル(EGTD)法を用いた強震動予測とその応用に関する研究」として、(1)EGTD法の高度化、(2) EGTD法による地震観測記録のシミュレーション、(3) EGTDによる地下構造の推定、(4) EGTDを用いたリアルタイム地震動予測、(5)実施項目に関する成果発表、以上の5項目を実施内容の目標として掲げている。 項目(1)に関して、震源メカニズム解の精度および小地震の数がEGTDの推定精度に与える影響について検討した。震源メカニズム解の精度は、震源近傍の観測点に対するEGTDの推定精度に大きく影響するが、震源距離が大きくなるにつれてその影響は弱まるため、自動決定されている震源メカニズム解を用いて良いことがわかった。小地震の数はできるだけ多い方が望ましいが、重要なのは小地震の数よりもそこに含まれる震源メカニズムの多様性であり、モーメント・テンソルの各成分がバランス良く卓越する小地震を用いることが重要であることがわかった。この他、EGTDの周期帯域を短周期に拡張した広帯域地震動の作成検討、EGTDを用いた断層の破壊過程のインヴァージョンを実施した。 項目(2)に関しては、近年の被害地震より強震記録を収集・整理し、EGTD法の適用事例を増やすための解析準備を済ませた。 項目(3)に関しては、地震記録の後続波群の到来時刻が震源位置に依存することから、震源と観測点間の地下構造が影響していると考え、3次元差分法による計算環境を整備した上で、公開されている地下構造モデルを用いて3次元差分法によるシミュレーション解析を行った。シミュレーション結果はEGTDおよび強震記録に観察された後続波群を再現することができなかったことから、地下構造モデルのチューニングを実施する必要があることがわかった。 項目(5)に関しては、研究成果の発表に向けて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、研究代表者に所属機関の異動があったため、研究環境の整備等に時間を要してしまった感があり、年度の前半は研究計画よりも遅れ目であったが、年度の後半には集中的に研究に取り組むことができたので、当初計画のペースにかなり近づくことができたと考えている。一方、研究を進めるうちに、当初想定していなかった研究課題に含まれる難しさが見えてきたことや、研究成果を外部発表するにはさらに詳細な検討が必要なこともわかってきた。このため、本年度実施して得られた研究成果の発表は次年度に持ち越してしまった感が否めない。このため、現在までの達成度としては、「やや遅れている」と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
項目(1)「経験的グリーン・テンソル(EGTD)法の高度化」に関して、本年度に引き続き、EGTDの短周期までの拡張法を開発する。短周期側では各地震ごとにスペクトルが低下し始める周期が異なることから、この特徴をどのように補正するかが地震動の再現性を高める上での鍵になることがわかっている。また、既往の研究に基づき大地震と小地震の震源スペクトル間のスケーリング則の援用を図る方法もあり、いくつかのアイデアを試して、経験的グリーン・テンソルに基づく広帯域地震動シミュレーション法を提案したいと考えている。 項目(2)「EGTD法による地震観測記録のシミュレーション」に関して、項目(1)において構築された手法を用いて、本年度収集・整理した地震記録を用いて短周期を含む広帯域地震動シミュレーションを実施し、適用事例を積み上げる予定である。 項目(3)「EGTDによる地下構造の推定」に関しては、観測記録およびEGTDの波形を分析し、後続波群の生成位置を特定するとともに、地下構造モデルのチューニングを行い、3次元有限差分法による数値解析を通じて、モデルの妥当性を検証したいと考えている。この項目に関しては、研究分担者と共同で実施する。 項目(4)「EGTDを用いたリアルタイム地震動予測」に関しては、当初計画していたが、他の項目の研究内容の難度の高さもわかってきたので、今年度は着手しない。 項目(5)「実施項目に関する成果発表」に関して、本年度の実施内容に追加検討を行い、研究成果を適宜とりまとめ、国内外の学会にて発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、研究分担者がヨーロッパで開催される国際会議に出席し、さらに強震動研究を実施している研究機関も訪問して、本研究課題に関連する分野の最新の研究動向を調査し、さらに3次元差分法を中心とするシミュレーション解析コードおよび地下構造推定に関連するの解析技術に関する情報コードについて情報収集・意見交換をするための旅費を計上していた。実際には、研究分担者が他の研究経費によるサポートを受けて国際会議に出席し、上記の研究動向調査や情報収集が行われなかったので、次年度において、研究分担者が国内外の学会発表やソフトウェア等の購入をする際に使用したいと考えている。
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