研究課題/領域番号 |
24540466
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
駒井 克昭 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90314731)
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研究分担者 |
中山 恵介 北見工業大学, 工学部, 教授 (60271649)
中下 慎也 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90613034)
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キーワード | 堆積物 / 懸濁粒子 / 沈降 / モデル / 有機物質 / 汽水湖 / 寒冷地 |
研究概要 |
北海道地方などの寒冷地の汽水湖の水環境保全には流入負荷対策に加えて湖底堆積物を起源とする栄養塩類の溶出や貧酸素水塊の形成などの有機汚濁対策が課題である.特に,寒冷地固有の泥炭質土,火山灰質土,畜産排水,畑地,森林,等の様々な起源を有する水と土砂が流入する上,湖底堆積物の形成過程における有機物質の作用に関する知見が不足していると考えられる.本研究では,湖底堆積物に含まれる有機微量元素と汽水湖の水質変化(塩分,有機物質)に着目し,寒冷地汽水湖における有機懸濁粒子の凝集・沈降モデルを構築し,湖底堆積物の形成過程を解明する.これまで,現地調査と室内実験を行うとともに,粒子特性解析および凝集・沈降実験を実施し,詳細なデータを収集した.また,現地調査より,網走湖内での堆積物の有機物特性の違いとその分布特性が把握された.具体的には,以下の成果が得られている.(1)粒度分布測定とフロックの沈降現象を単純化して定式化し,粒度分布の経時変化から沈降速度分布を求めた.粘土鉱物の沈降実験の結果と理論値その比較により,その有効性が示された.(2)網走湖湖底から採取された有機泥の沈降速度は,強熱減量とC/N比を用いた有機物質の指標を用いたモデルと比較して沈降速度が大きい傾向にあり,精製水中ではモデルに近い変化傾向を示したが,湖水中では有機泥のフロック構造は大きさによって変化せず一定に近い.(3)溶存イオンがわずかな条件下では有機泥に含まれる有機物量によるゼータ電位の違いは小さい.一方,湖水では海水由来の二価の溶存イオンやフミン酸様有機物質による疎水性相互作用がゼータ電位を低下させ,有機物が多い有機泥では沈降速度が大きくなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標通り,有機物質の特性を考慮した凝集・沈降モデルの適用性を検討できたことから,当初設定した目標はおおむね順調に達成されている.特に,本研究で開発した沈降速度推定手法を粘土鉱物と分散剤を用いた実験によって妥当性が検証された.本手法は粒度分布測定と粒子の沈降現象を単純化し,粒度分布の経時変化から理論値を求める新しい沈降速度推定手法であり,沈降速度の平均値が解析的に求められ,統計的な意味が明確であることから,従来の手法に比べてより優位性が高い.また,有機物質が有機懸濁粒子の沈降速度や界面特性に及ぼす影響を評価するためのデータを収集できていることから研究は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き,沈降速度推定手法とモデル化の高精度化を進める.開発した沈降速度推定手法の検証を進める.また,凝集・沈降モデルについて実験値の再現性が不十分である場合もあるため,寒冷地特有の凝集・沈降特性が示唆された.しかし,未だ実験ケース数が限られており,より一般的な結論を得るには実験条件を変えたより多くの実験データを蓄積することが必要である.今後も水中の溶存有機物を含めて,実験データを増やすとともに,界面特性についての実験データを増やし,有機物質の影響を考慮した凝集・沈降モデルの開発を進めることを目標としている.
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次年度の研究費の使用計画 |
天候不順等によって数回予定していた現地調査のうちの一部の時期がずれた.それに伴って,利用できる共同利用分析施設の利用スケジュールとも合わなくなり,一部の現地調査や試料の成分分析,および研究打ち合わせの時期を次年度に変更した.このため,当該助成金が生じた. 追加調査と分析,実験,および研究打ち合わせを実施することで当該助成金を使用することを予定している.
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