研究課題/領域番号 |
24540467
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山崎 剛 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80220317)
|
研究分担者 |
菅野 洋光 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 上席研究員 (30355276)
小林 隆 山形大学, 農学部, 准教授 (00355273)
|
キーワード | 植生熱収支モデル / 結露 / いもち病 / 湿度 / 下向き大気放射 / 将来予測 |
研究概要 |
昨年度に引き続き,湿度の測定できる気象測器と長波放射を含む放射4成分を測定できる放射計および結露センサーを古川,鹿島台の水田に設置した.さらに今年度は同様の機器を追加購入し,内陸部の川渡(標高170 m)にも設置した.観測期間は6月から9月にかけてである.これらのデータを植生熱収支モデル(2LM)に適用したところ,全体の75%は濡れ・乾きの実測状態を再現できた.再現できない場合では,センサーでは乾いているのにモデルでは濡れているとみなされる例がやや多かった(全体の16%).モデルは葉の濡れ時間をやや過大に評価する傾向があることになり,今後,モデルを改良していく上で考慮すべき点である. この2LMに将来の気候予測データを入力し,葉面湿潤度の将来予測を行った.使用したデータは,全球気候モデルMIROC5の将来予測結果を気象庁非静力学モデルJMA-NHMにより10 kmメッシュにダウンスケールしたものである.その結果,2081~2099年には東北地方の葉面湿潤度は約10%低下すると推定された.これは主に降水頻度が将来は減少し,葉が降水を補足する機会が減ることと,気温上昇に伴う飽差の増大により,葉面上水分の蒸発が促進されることによる.葉面湿潤度が減少するという意味では,いもち病のリスクは将来減少する方向に働くが,実際のいもち病発現は温度や降水強度の影響なども受けるため,注意深く検討する必要がある.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり古川,鹿島台に加えて川渡における気象観測を実施し,データの取得ができた.それらのデータを利用したモデル適用も順調に進んでいる.調書では予定していなかった将来予測の予備的な研究を行うこともできた点は,予定以上の成果といえる.一方,熱収支式の解析により,重要項目を抽出して,植生熱収支モデルと同様に湿潤状態を解析できる簡便な方法の考案については,今年度は結果を出すことができなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度も古川,鹿島台,川渡での観測を継続し,データの蓄積を図る.植生熱収支モデルによる解析を続け,やや濡れを過大評価する点など,モデルの改良を行う.簡便な湿潤状態推定法に関する研究を行い,いもち病予察に従来使われている経験的な手法であるBLASTAMに代わる感染危険度推定手法を検討する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
複合気象センサー一式に含まれる長波放射計を予定より低価格の機材としたため. 平成26年度請求額と合わせ,研究成果発表等に用いる.
|