研究課題/領域番号 |
24540469
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 正明 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (70188051)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 夜光雲 / 気候モデル / 重力波 / 夏季中間圏界面 / 大気潮汐 / スペクトル解析 |
研究概要 |
気候モデルに導入されているHinesによる重力波パラメータの変更実験をおこなった。モデルの下層大気における内部重力波の強制振幅の因子を小さくすることをおこなった。夏季中間圏界面付近の低温層の高度が低い問題は、その高度を上げることによりおおよそ現実的な中間圏界面温度、および低温層の高度を再現できた。ただし、中間圏界面最低温度の南北構造の違いの問題(現実では、高緯度から緯度30度に行くに伴い最低温度の高度が上がるような構造になっているが、モデルの結果では低緯度に行くに伴い高度が下がる構造)はあるが、30度から赤道域に行くに伴い最低温度の高度は現実と同様上がっているので、保留している。 問題は残っているが、ほぼ現実的な夏季中間圏界面付近の温度、低温領域の高度が再現されたので、仮想的な北半球夏至の状況でその高度におおよそ夜光雲が存在していること、および低温層での雲の水平分布を確認した。夜光雲の存在は落下速度依存性があるので、落下速度の変更実験をおこなうことで、現実的であると思われる落下速度を10cm/sと決め、夜光雲の時間的振る舞いを調べてみた。夜光雲が発生する高度(おおよそ84kmで数kmの幅をもっている)では、大気潮汐が大きな振幅を示しており、仮想的北半球夏至の固定実験では1日で振動する夜光雲が見られた。 時間的変動の様子を詳しく調べるために、スペクトル解析をおこない変動の様子を調べてみた。この仮想的夏至の状況における夜光雲の発生する高度では、東西波数s=1の1日振動で東に位相がうごく潮汐(non-migrating tideと呼ばれる太陽の動きと同期しない潮汐)が卓越し、それに伴って雲が時間変化していることが分かった。さらに、詳細な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現実的な夏季中間圏温度構造を決めるためには、重力波の役割を表現するパラメタリタリゼーションが必要である。このパラメータ値には多くの不確定性が存在し、現在でもよく分かっていないため観測や高解像度モデルによって研究が行われている。パラメータを変更する多くの数値実験を行う必要があったため、時間がかかってしまった。その結果、温度構造としては一応の温度分布が再現され雲の分布もおおむね表現されたが、夜光雲が存在する高度幅が広いという問題が明確になった。夜光雲は重力落下をするが、その効果が標準実験ではうまく入っていないということで、重力落下のパラメータ実験をおこなった。現実的な雲に反映するような落下速度の値を決め、夜光雲の時間的振る舞いはおおよそ現実的になったが、まだ幾分か高度幅が広い問題が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
夜光雲に関しては平均的にはほぼ現実的な分布は得られたので、2年目は季節を含んだ大気時間変動の要因の確認を行うために、数値実験および詳細な解析をおこない現実大気の解析結果と比較していく。一方、夜光雲の存在する広い高度幅の問題は水蒸気分布の問題と密接に関わっているので、太陽放射(および太陽変動)と関わるメタン酸化による水蒸気生成に関した化学過程の導入をおこない、輸送とメタン酸化の役割を精査する予定であり、3年目の夜光雲の気候感度実験の準備を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
数値計算に予想以上の時間がかかった為、学会で発表する予定だったものを延期せざるを得なかった。その旅費を24年度で使用しなかった分、次年度で使用する予定である。
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