研究課題/領域番号 |
24540472
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岩山 隆寛 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10284598)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 一般化された2次元流体 / 平行流の安定性 / 渦列の安定性 / Kelvin-Helmholtz不安定 |
研究概要 |
一般化された2次元流体系は,地球流体力学で知られている幾つかの2次元流体系を統一的に記述する方程式系である.したがって,この系を研究することは複数の2次元流体系を統一的視点から理解できる利点がある.現在までにこの系の乱流特性の研究が精力的に行われてきた.しかしながら流れの安定性といった基本的な問題は,この系に関して行われてこなかった. 平成24年度の研究では,この系の平行流の安定性に関する研究を行った.特に渦層の不安定問題であるKelvin-Helmholtz不安定(KHI)と呼ばれる最も基本的な流れの安定性を理論的に考察した.この系は流れ場と渦度場との関係に分数冪Laplace演算子が含まれており,解析的な扱いが難しい.KHIを解くにあたり,その数学的な解法の困難さを回避するために,まず渦層を点渦モデルで表現し,点渦列の安定性問題を考察した.さらに,点渦列の間隔をゼロとする極限をとることにより渦層の安定性問題を解いた.渦層は基本的に不安定であるが,系に含まれるパラメターαがα<1のとき渦層に与えた擾乱の成長率が発散する,という転移を発見した.この転移を,よく知られたKHIの物理的モデルを用いて解釈することに成功した.本研究の成果は,2013年1月にJournal of Physics A:Mathematical and Theoretical. vol. 46, 065501として出版された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画していた,点渦モデルを用いた流れの安定性問題を解くことに成功した.
|
今後の研究の推進方策 |
一般化された2次元流体の乱流状態において,スペクトルのピークよりも低波数側に形成されるスペクトル(赤外領域スペクトルと呼ばれる)について理論的考察と数値実験による検証を行う.Navier-Stokes方程式系やCharney-Hasegawa-Mima方程式系の減衰性乱流では,赤外領域に初期条件には依存しない普遍的スペクトルが存在することが知られている.赤外領域は,系のエネルギーなどの大部分を保持し,系の大域的保存則とも関連していることから,この領域の力学を研究することは重要である.一般化された2次元流体系では赤外領域の力学は未だ研究されていないため,この問題を調べることにする.理論的な考察は,乱流の完結モデルであるEDQNMモデルを使用し,数値実験による検証は,既に開発した一般化された2次元流体方程式のシミュレーションコードを使用する.数値計算結果の精度を上げるために,高解像度計算を行いアンサンブル平均をとる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
数値計算結果を保存し,またバックアップのためのRAIDを購入するための設備備品費(30万円),および研究関連書籍購入のための費用を前年度と同程度の10万円,ソフトウェアや文具等の消耗品費としてやはり前年度と同程度の10万円の合わせて50万円を計上した. 研究成果を共同研究者(名古屋工業大学 渡邊威 准教授)と議論するために,研究打ち合わせ旅費を必要とする.研究成果は,国内における複数の学会(気象学会(東京および仙台),流体力学会(東京),物理学会(神奈川),地球流体力学研究集会(福岡))で発表する予定である.そのための研究成果発表旅費を必要とする.出張の回数は前年度と同等と見積もっており,50万円を計上した. また,成果をまとめて論文として投稿するために,英文校正費,投稿料,印刷費を必要とする.そのため,その他の費目として10万円を計上した.
|