研究課題/領域番号 |
24540478
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大山 伸一郎 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (20444424)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | EISCAT / ノルウェー / 国際共同観測研究 / 北極域 / 熱圏 / 電離圏 / オーロラ / リモートセンシング |
研究概要 |
本研究目的は、脈動オーロラに伴い下部熱圏風速が激変する現象の発生機構を解明することである。2010年に発表した論文(Oyama et al., 2010;以降、論文2010と表記)で、本現象の観測結果を報告し、電場が振動することでジュール加熱率が増加して下部熱圏風速の激変を起こすという理論を提案した。本研究でこの理論の観測的検証を行う計画である。以下、H24年度の計画3項目である。 ① 欧州非干渉散乱(EISCAT)VHFレーダー、ファブリペロー干渉計(FPI)、光学観測装置との同時観測実験を実施。VHFレーダーへの新受信機(別予算で作製)の設置と、電場ベクトル推定の新手法の確認。② 新受信機データのための解析ツールの開発、③ 過去の観測データを用いたイベント解析 H24年11月13-19日に観測実験①を実施した。この実験期間、オーロラ活動は比較的活発であったが曇りの時間帯が多かった。しかし、脈動オーロラと下部熱圏風速の変動を約5時間観測することに成功した。この実験ではVHFレーダーに新受信機を設置し鉛直観測を実施した。光学観測装置も順調に稼働した。特にフォトメータは、本経費で新規購入の光学フィルターを装着して運用された。 解析ツール開発②では、数TBになる測定データを整理保存するためのツールの開発を行った。生データ(I/Q受信信号とGPS時刻信号)を送信パルスコードのサイクル毎に分割して保存することで、それ以降のデジタル処理を容易にした。 解析③では、H23年11月23日のVHF/UHFとFPIの同時観測データを用いてVHFレーダーで観測したイオン速度の鉛直成分から電場ベクトルを導出した。UHFレーダーで(VHFレーダーとは独立に)導出した電場ベクトルと比較して良く一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では2回の観測出張(内本経費からの支出は1回)を計画していたが、1回しか実施できなかった。1回の観測実験で研究対象のイベントを含む約5時間のデータを取得することができたものの、観測データを用いた理論検証にはさらに1-2例のイベントが必要と考えている。本研究の最終目的である「脈動オーロラ中の加熱量と風速変動量の定量的な理解」の達成には、良いイベントを含む観測データが必要である。観測回数の半減により良質なデータの取得が制限され、計画の遅れの原因になっている。観測データの初期解析結果を国際学会(2012年12月)で発表できなかった。 一方で過去のデータを利用した研究活動は順調に進展している。研究計画調書の「研究計画・方法」にある研究項目IとII(I: イオン速度鉛直成分のみから電場を推定する手法の開発、II: 光学データを組み合わせた粒子加熱率推定)がこれに該当する。これらの結果はH25年度内に学会と誌上論文で発表する予定である。 本研究計画の最低達成目標は研究項目IとIIの実施であるので、その部分のみを見れば達成度を(1)あるいは(2)と判断することも可能である。しかし、脈動オーロラと地球大気との関係を真に理解するためには新しい観測データが重要であるので、自己評価を(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、観測実験と解析を重点的に進める。H24年度に実施することができなかった観測実験1回を含め、H25年度冬期に観測実験を2回以上実施し、VHFレーダー・FPI・光学観測装置による同時観測イベントを2つ以上取得することを目指す。解析は、イオン速度の鉛直成分からの電場ベクトル導出とH24-H25年度の観測結果の解析を中心に進める。これらの結果を国内外の研究会で発表し、誌上論文で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究費の主な用途は、観測実験と研究発表の重点化のための出張旅費(観測実験:ノルウェー;研究発表:幕張、台湾、米国、英国)と、解析に必要な備品(データ保存用ストレージ2台)の購入費である。研究発表開催場所と学会名の組み合わせを以下に示す。幕張:日本地球惑星科学連合2013年大会、台湾:Workshop on Whole Atmosphere Coupling during Solar Cycle 24、米国:American Geophysical Union Fall meeting 2013、英国:EISCAT international symposium 2013。データ保存用ストレージは、QNAP社製 TS-469L、Seagate社製 ST1000NM0033を検討している。
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