研究課題
サブストームはオーロラの時間発展の一形態であり、頻繁に観測される。成長相、拡大相、回復相に分類され、オーロラは各相に特徴的な水平分布・時間変動を持つ。本研究が対象とした脈動オーロラは回復相の前半から現れ、数秒から十秒程度で明滅し、後半にはパッチと呼ばれる、主に東へ移動するオーロラの塊へと形状を変化させる。このパッチをファブリペロー干渉計(FPI; オーロラ光のドップラーシフトから大気風速を測定する光学装置)で測定し、パッチ近傍の風速分布を研究した。本研究の最大の成果は、風速変動を起こすためのエネルギー消失がサブストーム回復相に存在する可能性があることを示唆できた点と言える。サブストームは太陽風磁場と地球磁場とのつなぎ換わりをきっかけに始まり、地球磁場の勢力範囲である磁気圏に太陽風エネルギーを蓄積していく。蓄積量が限界に達すると堰を切ったようにエネルギーは高緯度の超高層大気に流入する。これが成長相から拡大相への切り替わり点、オンセットである。この時のエネルギー流入・消費量がサブストーム期間で最大になる、と考えられている。一部のエネルギーは熱圏大気の運動エネルギーに変換される。従って、熱圏風速の変動量もオンセットの時に最大になるはずである。しかしFPIで成長相から拡大相まで連続して測定したところ、オンセット前後よりも大きな振幅で変動する熱圏風速が捉えられた。本研究期間中にこの現象を起こす物理機構を突き止めることはできなかったが、従来の定説に反する結果は太陽風-磁気圏-電離圏-熱圏結合におけるエネルギー収支の再検討の必要性を示唆している。今後はFPI測定の時間分解能を向上させ、高速撮影カメラとEISCATレーダーを組み合わせた観測実験を実施し、パッチと風速変動の3次元的相対位置関係を調べることで、風速変動とエネルギー消失の存在をより確定的に示す証拠を押さえる。
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J. Geophys. Res. Space Physics
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