研究課題/領域番号 |
24540479
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡辺 正和 九州大学, 国際宇宙天気科学・教育センター, 准教授 (70446607)
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キーワード | シータオーロラ / 沿磁力線電流 / プラズマ対流 |
研究概要 |
前年度の計算機環境整備に引き続き、今年度はサイエンス面を推し進めた。特に数値シミュレーションにより、シータオーロラにともなう未知の大規模沿磁力線電流の存在を示唆できたのでこの解析を進めた。シータオーロラは惑星間空間磁場が強い北向き時、朝夕成分が急に反転すると形成される。シミュレーションでシータオーロラを再現したところ、昼間側のいわゆるNBZ電流と同じ極性の沿磁力線電流がシータオーロラに沿って発生していることがわかった。この電流は南北半球で反対称的に現れ、惑星間空間磁場朝夕成分の符号が逆になると流れる方向も逆になる。さらに、電流線を磁気圏へ追跡し、沿磁力線電流を駆動しているダイナモ機構について調べたところ、駆動源は圧力勾配による力であることが判明した。以上を論文としてまとめ専門誌に投稿し、平成26年3月現在審査継続中である。 以上のシータオーロラ解析で明らかになった圧力勾配による沿磁力線電流の駆動機構は、定常沿磁力線電流の一般的な話として拡張できると考えられた。そこで電磁流体力学の基本方程式を用いて理論解析を行い、沿磁力線電流は(1)発散するスローモードがダイナモを担い、(2)スローモードがアルフベンモードに変換される、という2つの過程が連続して起こることで生成する、とまとめることができた。この理論解析を論文にまとめようとしているが、途中1か所ほど未解決部分があって未完成である。ただ解決の目途は立っている。 シミュレーションで現れた沿磁力線電流が実在するかどうか、観測での検証を試みた。惑星間空間磁場のデータでシータオーロラ事象を探索し、極域低高度衛星の降下粒子と磁場観測でオーロラと沿磁力線電流の関係を調べた。今年度は事例解析を行い、シミュレーションを支持する沿磁力線電流系が存在することを確かめた。これも論文にまとめる予定だが、論理構成上、発表はシミュレーション論文公表後になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度はサイエンス面を推進する計画であった。シータオーロラのシミュレーション結果がまとまったので、平成25年9月にJournal of Geophysical Research誌に投稿した。年度内受理を見込んでいたが果たせず、現在第3ラウンドが進行中である。シータオーロラの論文に引き続く理論解析の論文や観測による検証の論文を準備中であるが、これらはシミュレーション結果が公表されていることが前提となるので、その意味で遅れている。また、SuperDARN (Super Dual Auroral Radar Network) データを九州大学で独自に解析できるよう、標準解析ソフトを九大のワークステーションに導入するつもりであったが、これもできなかった。理由は、SuperDARNデータの解析が必要な状況が生じなかったことで優先順位が下がったことと、研究代表者の学務における多忙である。
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今後の研究の推進方策 |
現在審査中の投稿論文の早期受理をめざす。論文が受理されれば、それを前提としている研究テーマへつなげることができる。査読者2名のうち1名が、シミュレーションコードの空間解像度を執拗に問題視し、空間解像度を上げたシミュレーションを求めた。これに対し、空間解像度を上げたコードで実際にシミュレーションを行い、主要な結果には影響がないことを確認している。したがって査読者のコメントに対応できる。 サイエンス面では、最終年度であるので、新しいテーマへの挑戦は最小限にし、比較的成果が確実視されるものに絞る。それは以下の3点である。 (1)定常沿磁力線電流駆動機構の理論解析: 投稿論文においてシータオーロラに付随する沿磁力線電流の駆動機構を論じた。これはシータオーロラに限らず、リージョン1やリージョン2電流系にも適用できると思われる。その一般論を論じる。 (2)シータオーロラに付随する沿磁力線電流系の観測による検証: シミュレーションで現れたシータオーロラの沿磁力線電流系を観測で検証する。すでに予備的なデータ解析を行い、シミュレーション結果を支持する事象が存在することを突き止めている。この事象解析を進め、論文としてまとめる。 (3)三日月型対流セルの分裂とその発生条件の解明: 惑星間空間磁場朝夕成分が卓越するときに形成される三日月型セルは、時折2つに分かれる様態を示す。これは開いた磁力線と閉じた磁力線が再結合することにより生じと予想されている。これを観測・シミュレーションの両面から調査する。 最終年度は、研究成果の対外的プレゼンテーションにも力を注ぐ。国内外の学会やシンポジウムで可能な限り発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年9月にJournal of Geophysical Research誌に投稿した論文の掲載料への支出を考えていたが、これがなくなった。論文はかなり長く(標準料金で出版できる上限の約2倍)、相当の違約金を払わなければならない。また、一連の論文の最初であるので、追加料金を払いオープンアクセスにする予定であった。これがなくなったのが大きい。また、ワークステーションのハード面の環境整備を考えていたが、これが最小限のものにとどまった。 最終年度であるので、成果発表のために多くの研究費を使う計画である。前述投稿論文やそれに続く論文の掲載料に相当額を当てる。また、対外プレゼンテーションを重視し、国内外での学会・研究会への参加旅費に相当額を当てる。三日月型対流セルの分裂に関する研究では、SuperDARNデータの解析が必要となるので、ワークステーションのハード面の環境整備に用いる。
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