研究課題/領域番号 |
24540484
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 徳行 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00144692)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | シェールガス / 残留ガス / メタン / 天然ガス / 四万十帯 / 基礎試錐 / 続成作用 / 変成 |
研究概要 |
平成24年度には基礎試錐「三島」より得られたカッティングス試料,コア試料と四国四万十帯,三波川帯より得た泥岩,泥質変成岩試料を用いて,試料粉砕時に放出される残留ガスの全ガス組成分析を行った.基礎試錐「三島」(資源エネ庁)は最上部の更新世魚沼層から地下深度6299m(現在の地層温度226.2℃)の中新世七谷層までのコア,カッティングス試料が得られている.四万十帯~三波川帯の試料はビトリナイト反射率,石墨化度,変成鉱物から被熱温度を見積もり,200~600℃の続成・変成温度であったことを見積もった.これらの泥岩・泥質変成岩試料について残留ガス分析を行い最大被熱温度の関係を検討した. 泥岩孔隙率が5%以下になると残留メタンの濃度が増加し,2~3%以下になるとC1の排出・移動がほとんど行われない.泥岩残留メタンの濃度が最も高まるのはRo=2~3%(古地温約200~250℃)の熟成段階である.Roが3%以上になるとC1の存在度が減少する傾向が認められ,C1の一部がグラファイト化している.シェールガス鉱床は堆積層中に残留したC1によって形成されるので,残留メタンの濃度が最も高まる母岩の熟成段階とシェールガスポテンシャルは密接に関係している.四万十帯に代表される付加コンプレックスは日本に特徴的に認められる地質構造であり,広域的に分布している.残留メタン濃度が高まるRo=2~3%の熟成段階にあるほか,地表に大規模に露出していること,圧縮場でのシール形成や閉鎖的なフラクチャーの形成が期待されることなど,シェールガス鉱床の成立が期待される.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
堆積盆地の頁岩中に残留する炭化水素ガスは,貯留岩に集積した天然ガスの総量よりもはるかに多く,その一部は新たなシェールガス資源として既に活用されている.しかし,このような細粒堆積物中に残留するメタン,二酸化炭素,水素などのガス成分が続成作用や変成作用においてどのように変化するのか未だ明らかにされていない. 本研究では,パルス放電ヘリウムイオン化検出器による全気体成分の高感度同時分析法を泥岩粉砕時に放出される残留ガス成分の測定に適用し,残留ガス成分の続成作用,変成作用における変化を解明する.また,シェールガス形成の温度圧力段階を明らかにし,日本におけるシェールガス鉱床形成の可能性を探ることが研究目的である. そのためにH24年度は,研究試料の収集,基礎試錐「三島」の泥岩試料・珪質泥岩の採取,全有機炭素(TOC)測定,泥岩残留ガスの測定,泥岩の最大古地温・熟成度の評価を行うことを計画した.試料採取では山形県新庄市大芦沢にて中新世珪質頁岩の試料採取を行った.本研究費で購入したタングステンカーバイドを主体とした粉砕器を用いて既に保有している基礎試錐泥岩試料や新たに採取した泥岩,泥質変成岩の全有機炭素濃度測定,泥岩残留ガス分析はほぼ予定通りに実施し,有用な基礎データを得た.試料の熱史を復元し続成作用,変成作用の段階のいける残留ガス濃度変化の変化を明らかにした.以上の成果を予察的に論文にまとめ石油技術協会誌に投稿し受理された.また,2013年9月に開催される国際有機地球化学会(IMOG2013,スペイン)での口頭発表が受理されている.本研究は当初の予定通りに進行しており,研究目的が十分に達成されつつある.
|
今後の研究の推進方策 |
H25年度は珪質頁岩の残留ガス分析を推進し,粘土質岩の残留ガス組成と比較すること.また,残留ガスのメタン,二酸化炭素,水素の安定炭素,水素同位体比を測定し,続成作用,変成作用における同位体組成の変化を明らかにすることが重要な課題である.残留ガス濃度は極めて少ないため効率的なガス捕集と高感度な同位体比測定を行う必要がある.残留ガス濃度が最も高まる段階の泥岩や泥質変成岩試料の孔隙率や孔隙の状態についても電子顕微鏡等を用いて観察したい.H24年度の残留ガス組成に関する研究成果と合わせて論文にまとめ国際学術誌に投稿する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は残留ガス中のメタン,二酸化炭素,水素の安定炭素,水素同位体比を測定することが最も重要な課題である.そのためにはガスクロマトグラフィー同位体比質量分析計に効率良く気体試料を導入する必要がある.H25年度はそのための試料導入システムを構築することを計画している.本分析には既存の設備を活用して実施するが,消耗品として超高純度ヘリウムガス,液体窒素,ガスクロマトグラフ用カラムを多用する.旅費は,国内学会や国際会議(国際有機地球化学会,スペイン)での研究発表を行うためのものである.
|