研究実績の概要 |
本研究は,シェールガス形成の熟成段階を明らかにし,日本におけるシェールガス鉱床形成の可能性を探る事が研究目的である.平成25年度の研究成果によってシェールガス鉱床形成の熟成段階が明らかになった.平成26年度は,頁岩残留ガスの研究成果を発展させ,北海道古第三紀石炭中に適用しコールベッドメタンの研究に発展させた.
地表に露出している日本の古第三紀石炭の熟成度は総じて低くビトリナイト反射率にして0.7%以下である.熟成度の異なる石炭試料を準備して残留ガスや排出ガス組成の変化を明らかにするため室内で準開放系と閉鎖系での加熱実験(反応温度330~390℃,加熱時間24~168時間)を行った.その結果,ビトリナイト反射率で0.8~1.8%,石油生成帯―湿性ガス帯―乾性ガス帯の石炭試料を得ることができた.なお,閉鎖系での加熱実験は平成25年度に実施したものである(Takahashi et al., 2014, Int. J. Coal. Geol.).
準閉鎖系と開放系で加熱して得られた排出ガス(メタン,エタン,プロパン)の炭素・水素同位体組成を測定し,北海道の石炭における炭素・水素同位体組成の変化とビトリナイト反射率の関係を初めて明らかにした.この関係に基づいて石炭起源炭化水素ガスの同位体組成を求めることにより,その排出時の熟成段階(温度・深度)を見積もることが可能になった.この研究成果は,シドニーで開催された国際会議(The 31st Annual Meeting of the Society for Organic Petrology)で発表した.また,その一部を石油技術協会誌(高橋ほか,2014, 353-354)で公表した.本研究によって,北海道古第三紀石炭の熱分解起源コールベッドメタンの資源ポテンシャルについて考察することが可能になった.
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