研究課題/領域番号 |
24540488
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
公文 富士夫 信州大学, 理学部, 教授 (60161717)
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キーワード | 有機炭素量 / 日本海 / 気候変動 / 更新世 / 隠岐堆 / IMAGESコア / 古気候学 |
研究概要 |
隠岐堆で採取されたMD01-2407コアについて1cmおきに(約250年間隔)で約60万年前までの分析を終え,有機炭素濃度の変動が気候・環境変動を高時間分解能で記録していることを解明した.また,秋田沖の日本海で採取されたMD01-2408コア試料についても4cm間隔で1cm分の分析を終え,20万年前までの有機炭素濃度を250年間隔で測定しおえた.これらの結果は,年代の重なる範囲では相互に良く類似しており,10万年前までの測定値は上越沖日本海での測定結果ともよく似ている.有機炭素濃度は日本海南西部のコアでが高く,北西側で低くなる傾向をもつが,その変動パターンは数百年の時間分解能で見ても非常によく似ている.この事実は,極東アジアの気候と環境の変動が日本海のほぼ全域で類似した生物生産性の変動を引き起こして,堆積物中の有機炭素濃度の変動として記録されていると考えられる. 本研究の成果として,日本海の堆積物から,平均250年の間隔で,60万年前まで遡って,北半球中緯度地域における古気候指標を得ることができた.それは,中緯度地域におけては類例のないほど長期間にわたり,かつ時間分解能の高い古気候資料である.また,その古気候指標は,年代的に重複する期間においてはグリーンランドの氷床の酸素同位体比変動と数百~2,3千年時間スケールでもよく類似しており,気候変動を支配する要因として,北極域の氷床量(特に面積)が特に重要であることを示唆する.また,南極氷床の酸素同位体比変動との高い類似性も明らかになった。 海洋酸素同位体ステージ(MIS)3における短周期の気候変動との対応関係をより詳細に検討するために,ざらに分析間隔をつめて時間分解能のより高い資料にするように分析をすすめている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた2つの長尺のコア試料(それぞれ約50m長)について250年ほどの間隔での測定を終え,分析間隔を詰めてより高い時間分解能での資料整備を進める段階に達している.また,12万年前までについては,上越沖の日本海のコア試料(MD179-3312など)の成果をもとに論文化を達成した(Urabe et al., in press).隠岐堆コアの成果を基にした論文化も準備が進んでいる.これらの結果、堆積物中の有機炭素量変動を指標とした「標準気候編年試案」の作成に目処が立った。さらに日本周辺、太平洋側の堆積物についても予察的な検討を開始できる状態になっている。
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今後の研究の推進方策 |
資料の時間分解能をあげるために追加の分析を実施する.それと並行して論文化の作業を進める.また、その成果を国際学会(AOGS;札幌)で発表するように準備も進める.その論文投稿を遅くとも8月末までに行う.有機炭素量の経年的変動については、陸上での資料も集積し、かつ標準化した上で集成する作業も行っており,その資料と合わせて「標準気候編年試案」の作成を進める. IMAGESプロジェクトで日本列島周辺で採取されたコア試料は非常に有用な情報源であることが確認されたので,日本列島の太平洋側で採取されたコア試料(MD01-2421,-2422)についても予察的な研究を行い,有機炭素量変動に基づく古気候指標の確度と精度を上げる.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも安価に消耗品が購入できたので、次年度使用額が生じた。 残金は, 試料の前処理と分析後の残り試料を保管するために使用するスクリュー管瓶の購入にあてる。スクリュー管瓶は、6cc用で、1箱(110個入)を25箱購入する予定である。
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