研究課題
2014年度においては秋田沖コア試料(MD01-2408)に対する測定間隔を前年度の4cm毎から1cmおきへと更新し、125年程度の時間分解能で全有機炭素量(TOC)・全窒素量(TN)の測定を行った。隠岐堆コア試料(MD01-2407)についてもコアの上位から順次1cmごとの測定を追加し、約20万年前までについて125年間隔での分析結果を得た。これらを含む3年間の研究の成果として、日本海の2箇所において、約20万年前までの長期にわたる生物生産性の変動を125年程度の時間分解能で解明することができた。また、隠岐堆においては250年の時間分解能で20万年前~60万年前の生物生産性変動が明らかになった。ただし、海水準が最も高い時期においては日本海の海底環境が酸化的であったために有機物の分解が促進され、TOC含有量は本来の生物生産性よりも低く見積もられている可能性も明らかになった。これらの成果は学生の協力を得て2つの国際会議と3つの国内学会で発表した。本研究で測定した過去60万年間にわたるTOC・TN資料は、日本海における生物生産性の変動が、北極域の気候変動と密接にリンクしていたことを示している。その変動を引きおこした直接の要因は日本海と大気における極前線との位置関係であり、北極域の氷床量の増減に支配された極前線の南北移動が、日本海おける湧昇と深層水からの栄養塩回帰、河川流入を通じた陸域からの栄養塩供給に強い影響を与え、結果として日本海の生物生産性を強く支配したものと考えられる。このことを逆にみれば、日本海の生物生産性の変動は、海水準がもっとも高い間氷期を除いた,第四紀後期の大部分の期間を通じて北極域の氷床量をモニターしてきたものと見なすことができる。その意味でも日本海での過去60万年間の生物生産性の変動を明らかにした意義は大きい。
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第四紀研究
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Quaternary International,
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http://dx.doi.org/10.1016/j.quaint.2014.04.028
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