日本海の秋田沖および鳥取沖(隠岐堆)で採取した2本の海底コア試料に対して平均120~250年の時間間隔で,前者では20万年前までの,後者では60万年前までの有機炭素と全窒素の濃度を測定した.これらの濃度の経年的な変動は,おもに日本海の生物生産性の変動を表しており,第四紀中・後期の気候変動,特にグリーンランド氷床の増減と密接な関係を持っている可能性が判明した.この資料は陸域の湖沼堆積物に対して蓄積してきた気候変動指標とほぼ一致しており,第四紀中・後期における日本海の生物生産性の変動は,北極域の氷床量変動を表す可能性があり,今回測定した資料は古気候指標としても大きな意義を持つものである.
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