研究課題
研究初年度では、南海トラフの海底坑井で取得された物理検層データの中から孔壁イメージデータを用いて、データ上に認められた孔壁破壊現象の幅と方向から詳細に応力解析を実施した。その結果、反射法地震探査で認められている大規模断層帯の内部やその外側などに複数個所の応力活断層が存在している可能性が得られた。また、地質構造モデリングの一種である粒子法数値シミュレーションを実施して、南海トラフの坑井掘削箇所に近い地質環境を再現したところ、構造形成過程において内部応力が非常に変動することが検出された。研究二年度目は、前年度に認定した孔壁破壊を使用して地下応力の絶対値を解析によって求めた。応力活断層では断層面に沿う方向のせん断力が解放されているであろうと考えられるが、解析の結果も応力活断層部では応力の絶対値が低下していることを示唆している。ここまでの成果をまとめた論文を国際誌に投稿した。また、断層が存在する場合での孔壁破壊の場所変化について、粒子法シミュレーションを用いて検討した結果、断層面の存在によって孔壁破壊の場所が影響を受けることが確認された。これは実際の孔壁破壊現象でも観察されている事実と一致する。研究最終年度では、遅れていた粒子法シミュレーションソフトウェアの改良版の発売に合わせて計算機をより高速機種に変更し、解析を継続している。一方、前年度に国際誌に投稿した論文原稿に対する査読結果に基づいて、応力絶対値の低下個所と断裂系密度の関連について再検討を行った。その結果、断裂密度の高い箇所は一般には応力低下個所と一致しているが、完全に一致しているわけではないことが分かった。この成果は、応力的に活性な断層を認定するためには断裂の高密度帯だけに注目することでは不十分であることを示している。この論文は年度末の2月にEPS誌(Impact Factor: 3.06)から出版された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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