研究課題
本研究では徳島県沢谷地域において,北部秩父帯の内部構造,イライト結晶度による変成度,K-Ar放射年代による変成年代をもとに,北部秩父帯と黒瀬川帯との関係について検討を行った.踏査における砕屑岩の上下判定から,南部秩父帯は北傾斜で北上位,北部秩父帯は南傾斜で南上位を示している.黒瀬川帯の走向・傾斜なども考慮すると秩父累帯は,大局的には半波長14km程度の向斜構造を呈する.イライト結晶度は,続成帯~エピ帯の変成度を示す.構造的上位の黒瀬川帯はすべて続成帯で,南翼に限れば,構造的下位に向かって変成度(被熱)が高くなる.南部秩父帯も続成帯相当の変成度を示すが,層位との間に相関は見られない.これに対し北部秩父帯は,アンキ帯とエピ帯相当の変成度を示し,黒瀬川帯や南帯に対し明らかに変成度が高く,構造的下位に向かって変成度が高くなる.また沢谷地域は周辺地域よりも高い変成度を示す.北部秩父帯から得たK-Ar年代は108.5±2.4Maを示す.これは本調査地域東方の変成年代(鈴木ほか,1994)にほぼ相当し,沢谷地域の変成年代(磯崎ほか,1992)と大きく異なる.沢谷地域には,ペルム系錦層群に類似する緑色砂岩など,周辺地域と異なる岩相が分布する.これらはペルム紀付加体に相当すると考えられるが,北部秩父帯との接触関係や帰属については今後の課題である.調査地域の南部および北部秩父帯は,両帯ともにその堆積年代が構造的下位に向かって若くなる(富永,1990).また君波ほか(2007)やKiminami(2010)は本調査域の北部秩父帯が南上位であることを示している.したがって調査地域の北部秩父帯は,南傾斜・南上位の内部構造を呈し,構造的下位に向かって変成度が高くなる.特に北部秩父帯の北翼は,三波川帯と同等の変成度を示し,その変成年代は三波川変成年代100~125Maの範囲に収まる
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