研究実績の概要 |
本研究の目的は,カヤツリグサ科マツバイを用いて,放射性Cs汚染された土壌を除染するファイトレメディエーション技術を基礎的実験およびフィールド実験を行い,福島県の放射性Cs汚染の除染に実用化することである。 平成24年度に実施した①室内におけるカヤツリグサ科マツバイの水耕栽培実験,②福島県におけるカヤツリグサ科マツバイの小規模フィールド栽培実験を行った。①では、実験終了後のマツバイの最大Cs濃度は地上部で1880 mg/kg-DW、根部で984 mg/kg-DW、マツバイ全体で1560 mg/kg-DWであった。②では,マツバイが最大で6000 Bq/kg以上の放射性Csを吸収可能であり,土壌とマツバイの放射性Cs濃度の聞には正の相関が認められることが明らかになった。 平成25年度および26年度は放射性Cs汚染された水田土壌において,マツバイのファイトレメディエーションとしての有効性および実用的栽培方法確立のためのフィールド栽培実験を行った。実験期間は,平成24年度から継続して約18ヶ月間である。この実験では,放射性Cs汚染された水田を湛水し,細断したマツバイを散布し,自然に定着・成長させ,栽培実験を実施した。この水田土壌の放射性Cs濃度は,平均で6580 Bq/kgである。この実験の結果,採取したマツバイから, 240~5100 Bq/kgの放射性Cs濃度が得られた。その平均は,平成24年度で1310 Bq/kg,平成25年度で782 Bq/kgである。以上の結果に基づくと,マツバイによる放射性Csのファイトレメディエーションは極めて簡便で有効な除染方法であることが改めて証明された。また,その実施方法の一つとして,マツバイの細断散布法が極めて簡便であり,広範囲の水田を除染する際に有効であることが実証された。
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