研究課題
基盤研究(C)
平成24年度は,獣脚類恐竜の植物食化(テリジノサウルス類)と繁殖行動(オルニトミモサウルス類)についての研究を行った.中国遼寧省から発見されたテリジノサウルス類の研究を行った.この恐竜は,中国・モンゴル・米国の白亜系から発見されている,特異な獣脚類恐竜だ.歯の鋸歯が大きく,骨盤が異常に広ため体腔が大きい.これらの特徴から,植物性であることが示唆されている.顎と歯冠の構造から,典型的な植物食の鳥脚類や角竜類に見られる特徴に類似し,顎をかみ合わせたときに,その衝撃に耐え植物繊維を擦りきりやすいようになっていることを明らかにした.今回の発見は,テリジノサウルス類が,鳥脚類や角竜類のように植物を食べるのに適した顎の構造を持っていたことを示す貴重な証拠となった.この内容は,米国古脊椎動物学会と日本古生物学会で発表し,論文を投稿した.カナダ・アルバータ州から発見されたオルニトミムスの標本を研究し,翼の起源を明らかにした.3標本の検証の結果,亜成体と成体の体は毛のような羽毛で覆われていたことを判明した.さらに,亜成体の腕は毛のような羽毛であるが,性成熟を迎えた成体の腕には乳頭突起に類似した構造を保存していることから,前肢は羽軸のある羽根に覆われていたと考えた.羽毛の痕跡が残っている化石としては,北米大陸初の記録となり,また翼を持つ獣脚類として最も原始的な記録となった.翼の形成が性成熟のタイミングと合っていることから,獣脚類における翼の起源は,繁殖行動にあると考えられた.これらの内容を日本古生物学会で発表し,さらにScienceに論文を出版した.
2: おおむね順調に進展している
「恐竜の食性復元」と「鳥類の起源」という2つの大きなテーマに沿った研究が実現し,さらに学会発表と論文執筆が順調に行われている.さらに,平成25年度以降の研究の見通しもできており,研究は順調に行っていると思われる.
今後は,予定通り様々な恐竜の食性を吟味し,研究を進めていく.平成25年度と26年度の研究材料は確保され,今後は,これらを粛々と進めていくことで研究の達成が可能と成る.平成25年度は,モンゴルの標本を中心に,オルニトミムスの植物食性についてと食性変化による繁殖行動の変化についてなどの研究を行っていく予定である.既に,研究を始めており,これらの重要性が高いことは明らかであり,成果を一般公開することで注目を浴びることは間違いない.
研究の標本が海外にあるため,現地での標本観察と分析が必要と成ってくる.主に,旅費に成るが,その他分析にかかる費用などが予定されている.主な渡航先としては,中国,モンゴル,韓国,米国,カナダである.各国にある研究機関で研究を行っていく.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
Science
巻: 338 ページ: 510-514
10.1126/science.1225376
Acta Geologica Sinica
巻: 86 ページ: 294-303
Cretaceous Research
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10.1016/j.cretres.2012.04.013