研究課題
今年度はジュラ紀付加体として、四国斗賀野ユニットを対象とした。本研究では、高知県高知市で得られた斗賀野ユニットに相当するボーリングコアの詳細な記載を行い、従来の斗賀野ユニットの形成過程を再検討した。コア(全長475m)の詳細な観察を行った結果、チャート・砕屑岩シークエンスの岩相層序に基づいて少なくとも3回の繰り返し構造(スラストシート)が確認された。各シートの最下部に認められる混在岩は、脆性破砕帯の発達と岩相の混在化で特徴づけられる。混在岩の基質は泥岩及び塩基性岩からなり、主にチャート岩片を配列するblock-in-matrixを呈する。シートの最下部が激しい破砕を受ける一方、その下位の砕屑岩部には脆性破砕帯は全く発達せず、代わりに未固結変形による破断された砂岩泥岩互層が卓越する。ビトリナイト反射率から得られた温度情報より、脆性破砕帯は100~150℃の領域で形成されたものと推定される。コア中のチャート及び珪質泥岩から年代決定に有効な放散虫化石が得られた。チャートから得られた放散虫化石はTriassocampe deweveri群集に相当することから、トリアス紀中期の堆積年代を示す。珪質泥岩はStriatojaponocapsa. plicarum群集とStriatojaponocapsa. conexa群集に相当する化石が得られることから、ジュラ紀中世に堆積したものと考えられる。このほかに、韓国ソウル大学理学部Y.I.Lee教授との合同研究を実施した。これは、砂岩石英粒子の走査型電子顕微鏡とカソードルミネッセンスを用いた画像により、後背地をより鮮明に解明することを目的としたものである。予察的な検討の結果、従来石英粒子では後背地推定が不可能と言われてきたが、深成岩、火山岩、変成岩カテゴリーで識別が可能となった。これは今後、新しいメソッドとして期待される。
2: おおむね順調に進展している
本課題では、中生代付加体を構成する砕屑粒子の高精度後背地研究を目的としている。この2年間研究により、ジルコン粒子による年代測定により、付加体を形成するタービダイトの堆積年代とそれを貫く砕屑岩岩脈中のジルコン粒子の形成年代が極めて近接することから、付加体を構成する粒子は島弧から急速な隆起侵食を受けて供給されることを明らかにした。また中生代付加体の形成過程をコアの精密な観察により、従来明らかにされていなかったスラスティングによる擾乱を明確にした。そして、さらに、新しい手法(SEM-カソードルミネッセンス画像)による石英粒子の後背地研究に着手した。以上により、最後の1年間で、目的が達成できるものと思われる。
今年度は総括の年度として、昨年度で予察的に行った砂岩石英粒子の走査型電子顕微鏡とカソードルミネッセンスを用いた画像処理をさらに進める予定である。実験機器はソウル大学に設置されているものを使用するため、3回程度のソウル大学滞在(1回3日間)を計画している。また、前年度実施したジュラ紀付加体の犬山セクションのジルコン年代測定の結果を総括するため、現地調査における詳細な観察、とくに砕屑岩岩脈とタービダイトの岩相比較を行う予定である。犬山セクションで明らかになったように、チャート・砕屑岩シークエンスにおいて、その主要構成岩となるタービダイト砂岩の一部が岩脈の可能性が極めて高いことは、付加体における岩脈形成の意義を考察する意味で貴重な情報である。さらに、斗賀野セクションに相当するボーリングコアにおける詳細なチャート・砕屑岩シークエンスの総合的地質学検討は、犬山セクションの砕屑岩岩脈とともに、中生代付加体のテクトニクス解明に大いに有効である。今年度は、上記の課題を総括し、必要に応じて補足的な資料収集に充てる予定である。
当初予定していたジルコン粒子年代測定の委託業務が、発注できなかったことによる。発注できなかった最大理由は、発注先となる研究所での業務が混雑しており、年度内完了が無理と判断された。当初の計画を若干変更し、石英粒子の後背地研究の実験に使用を変更する予定である。
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Journal of Earthquake and Tsunami
巻: 8 ページ: -
10.1142/S1793431114500079
Journal of Asian Earth Sciences
巻: 74 ページ: 50-61
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