研究課題
本研究の目的は、日本列島の骨格をなす中生代の付加体の砕屑岩砕屑粒子の年代測定と化学組成を検討し、アジア大陸東縁に形成された付加体の後背地を推定するものである。従来後背地研究といえば、モード組成や重鉱物分析による研究が主流であったが、近年はジルコン粒子のU-Pb年代測定や希土類元素を用いた化学組成による後背地が必要不可欠となっている。本研究では、その新しい手法を採用し、可能な限りの後背地の特定を行うものである。なお、本研究では砕屑岩の採集を中生代付加体のチャート砕屑岩シーケンスの砕屑岩に限定する。さらに付随的に、西南日本外帯(秩父帯)と内帯(美濃帯)のジュラ紀付加体の後背地研究で、その後背地を特定することにより、2重配列の成因についても一定の束縛条件を与えることも目的の一つとしている。これらの目的達成のための研究計画では、24年度主に砕屑性ジルコン粒子のU-Pb年代測定、そして25年度26年度では主要元素と希土類元素の化学分析を行い、後背地を特定する計画を設定した。本研究の実績の概要は以下のとおりである。平成24年度は、美濃帯犬山地域のチャート砕屑岩シーケンスの砕屑岩から抽出されたジルコン粒子のU-Pb年代測定を行い、推定される砕屑岩堆積年代に極めて近接したジルコン形成年代を検出した。平成25年度は、秩父帯付加体チャート砕屑岩シーケンスの砕屑岩からビトリナイト抽出を試み、被熱温度などから、序列外スラストを特定した。26年度は、チャート砕屑岩シーケンスのもう一つのジュラ紀付加体代表的構成要素である礁-海山コンプレックスについて海山の噴出場の推定を希土類元素などの化学組成によって検討し、MORBであることを明らかにした。また秩父帯の形成過程についてジュラ紀付加体の被覆する白亜系堆積物産出のクロムスピネルを用いて検討し、黒瀬川帯における大規模左横ずれ運動を想定した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、砕屑性ジルコン粒子のU-Pb年代測定と砕屑物の化学組成を主体としているが、後者については予察的段階で測定条件に見合う試料が得られなかった。その結果、ビトリナイト測定に変更し、付加体内部のテクトニクス解明を明らかにした。またこれを踏まえ、従来その化学組成がほとんど報告されていない緑色岩の化学組成(希土類元素)について検討した。今後この種の検討が、付加体構成岩類の後背地研究に重要な意味を持つことが推定される。
本研究で明らかとなった、美濃帯犬山のチャート砕屑岩シーケンスの堆積年代に極めて近接した砕屑性ジルコン年代の形成年代、礁-海山コンプレックスの海山の噴出場、チャート砕屑岩シーケンス中の砕屑岩から抽出されたビトリナイトが示す被熱温度など、ジュラ紀付加体を取り巻く後背地や形成テクトニクスについて総合的に研究を推し進める。
平成26年度に予定していたカソードルミネッセンス画像による石英粒子の後背地研究が、同撮影機材の調子不良のため計画通りできなかった。とくにその影響で岩石採集及び薄片準備ができなかったことから、次年度使用額が生じた。
次年度は、ジュラ紀付加体である秩父帯と美濃帯の外帯内帯2列配列に関する総合的検討を行うために、白亜紀のジュラ紀付加体被覆層の後背地研究を予定している。そのために、九州の調査及びそれに関係した室内実験を実施する(岩石薄片作成、ジルコン粒子U-Pb年代測定など)。
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