研究課題/領域番号 |
24540496
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
角和 善隆 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (70124667)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生痕化石 / 放散虫チャート / 遠洋深海 / 底生生物 / 海洋環境変動 / 進化 |
研究概要 |
約5億年前から4億5千万年前、カンブリア紀末からオルドビス紀後期にかけての遠洋深海底に生息する底生生物の進化と海洋環境の変遷を検討する目的で、2012年9月12日から26日に、オーストラリア、New South Wales州に分布するLachlan Fold Beltに属する主にオルドビス系放散虫チャートの生痕化石に関しての産状観察と試料の採取を予定通りおこなった。そして、オルドビス系中部から上部にかけての一部を除き、予想していたように野外では明確な生痕化石は確認できなかった。 採取した岩石試料は日本に送付後、室内で切断、研磨、フッ酸による腐食などの処理を行い、一部は岩石薄片を作成し観察をおこなった。その結果、予察的検討通りの点と、予想していなかった発見の2点が成果として挙げられる。予想通りの点は、カンブリア紀中頃(?)には僅かながら小型の生痕化石が見いだされ、オルドビス紀中期にはそれが大型で多様性が高くなる点である。すなわち、Great Ordovician Diversification Eventと一般的に呼ばれる、浅海域での生物多様性の急激な増大が、遠洋深海底でも確認された。しかし、生痕化石の大きさや多様度は浅海域に比べるとより小さく、低いことも分かった。 予想外の発見としては、カンブリア紀末からオルドビス紀最初期には一時的に生痕化石に表現された底生生物には衰退期があることを確認できたことである。これは遠洋深海において何らかの理由によって酸素レベルが低下した可能性がある。しかし、この出来事が地球規模のことか、Lachlan Fold Beltという一部に限られたことなのかは、ほかに比較すべきデータが無いために不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査については、一部露頭では到達するのに予想以上の時間がかかり、十分な調査が行えなかったが、その他ほとんどの地点では期待通りの成果が得られた。90%の達成度と言える。 室内においては、岩石試料の切断、研磨、フッ酸処理などは従来所有の設備を利用して問題なく行うことができ、観察も順調であった。特に岩石試料に見られた微小な生痕化石について、等倍から10倍程度拡大して詳細に観察・記載するために、写真撮影を行いパソコンで画像処理を行った映像で検討した。その写真撮影の機材と方法について改良を行った結果、非常に安定して良い画像が得られ、効率化ができた。岩石試料は研磨面やフッ酸腐食面は平面であるが、その反対側はしばしば不定形であるため、従来は写真撮影する面を水平に保つのが難しかった。今回は試料を砂に埋めることにより、カメラの被写界深度の範囲で撮影面を水平に保て、全体にピントが合った写真撮影が可能となった。また、従来行っていたように研磨面に透明ラッカーを塗ると光の反射が著しかった。しかし、今回は間接照明を行える装置を組み合わせ導入した結果、反射を押さえられた。また、透明ラッカーは塗りムラができやすかったが、オイルを塗ることで塗りムラが防げ、撮影後は拭き取るだけで簡単に次の行程へ進む事が可能となった。達成度は100%を超えたと言える。 順調な室内観察が可能となった結果もあって、成果の達成度も95%である。標準化石による厳密な時代論が弱い点がマイナス点となる。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度の野外調査および試料の処理、観察は順調に進行したので、当初の予定通り、野外調査、試料採取をカナダ、Newfoundlandでおこなう。ここでは、ほぼ同時代の放散虫チャートについて、異なった大洋関するデータの取得が可能である。すなわち、21012年度に得られたオルドビス紀におけるPanthalassa海の北半球中緯度付近の海洋の結果が、Iapetus海の赤道域でも適応できるかを検討する。研究手法については、今年度確立したものを踏襲する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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