研究課題/領域番号 |
24540498
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
奈良 正和 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (90314947)
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キーワード | 古生態 |
研究概要 |
高知県土佐清水市に露出する中新世前弧海盆堆積物である三崎層群において,沖浜~外浜環境で形成された津波イベント堆積物を対象に偽礫の産状観察とファブリック解析をおこない,その堆積機構の復元をこころみた.また,あらたに河川に遡上した津波堆積物の可能性があるイベント堆積物を見いだした. 愛知県南知多町に露出する中新統師崎層群の前孤域漸深海帯堆積物を対象に,イベント堆積物の堆積過程を単層スケールで復元した後,それに応答した埋在性小型底生動物群集の遷移過程の高い精度での復元を試みた.その結果,Chondrites isp.やPhycosiphon incertumといった生痕化石を形成した動物の植民過程を復元することができた.また,同時に,おそらく地震イベントを示唆する注入構造を発見することも出来た. 和歌山県の中新世前弧海盆堆積物(田辺層群)に豊産する,ある生痕化石の分類学的・古生態学的検討を行い,いくつかの新知見を得ることができた. 愛知県北設楽郡に露出する北設亜層群の地質調査を行い,”弧内”堆積盆の埋積過程について概略的な傾向を把握した. さらに,トルコ共和国で開催された生痕学の国際集会 (12th International Ichnofabric Workshop) に参加し,本研究の成果の一部について1件の口頭講演ならびに1件のポスター講演を行った.他にも,上記の三崎層群の古生態系復元などに関する6件の国内学会講演を行った.そのうち3件は,第13回日本地質学会四国支部総会・講演会において優秀ポスター賞を受賞することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三崎層群や師崎層群といった前孤海盆堆積物や,“弧内”堆積盆堆積物である北設亜層群の検討が進行中であり,多くの有用なデータが集まりつつある.また,トルコ共和国で開催された国際集会 (12th International Ichnofabric Workshop) では,現時点での総括的な口頭講演をおこない,参加者と議論を交わした.その結果,本研究の対象地域である本邦と同様に,活動的プレート境界に位置する彼の国の研究者らから,独創性を評価するきわめて好意的なコメントをいただいた.さらにこうしたこともあって,2015年に開催予定の第13回集会 (13th International Ichnofabric Workshop) のオーガナイザーに選出された.また,このほかにも複数の講演を行い,うち3件は優秀ポスター賞を受賞した.これらの事実は,本研究が順調に進行していることの傍証となろう.
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今後の研究の推進方策 |
今後も三崎層群,田辺層群,師崎層群といった前孤域の堆積物を中心に,“弧内”から背弧域の下部-中部中新統をも対象に調査を行っていきたい.また,2013年には,国立台湾大学からの招聘で,同時代の大陸縁辺堆積物についても観察する機会を得た.その際,複数の生痕化石について,新たな知見となりうる特徴を発見する事ができた.これらは中新世の安定的浅海環境の古生態系を復元し,本研究の成果と比較する上できわめて重要であり,今後も継続して考察していく必要があろう.最後に,本研究課題は,その独創性ゆえ,国内では関連する研究者の数がきわめて限られている.したがって,今まで通り,国際的な研究集会にも積極的に参加し,研究内容のbrush upにつとめていきたい.
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