研究課題
高知県土佐清水市に露出する中新世前孤海盆堆積物(三崎層群)において,現在まで調査を行っていなかった層準の地質調査を行い,現在まで三崎層群から報告のないOphiomorphaの一種を特徴種とする生痕化石群集を観察するとともに,堆積相解析に基づきその堆積場を推定した.また,同層群において,津波堆積物の可能性が高いイベント堆積物の追加調査を行い,新たなデータを蓄積した.島根県浜田市付近に露出する中新世前背弧海盆縁辺堆積物(唐鐘累層)において,堆積相と化石群集,そして,生痕化石群集の観察を行った.これによって,中新世西南日本弧の前孤から“弧内”をへて背弧に至る堆積場のデータを得ることが出来た.高知県内の現世波浪卓越海岸において生痕相と底生動物の観察を行うとともに,底生動物を採集し飼育観察を行った.さらに,3編の査読付き論文を公表し,10件の学会講演を行うとともに4件の講演が確定している.なお,学会講演のうち,本研究課題と関連の深い,西南日本中新統の津波堆積物に関する1件は,日本地質学会から優秀ポスター賞を賜った.
2: おおむね順調に進展している
概要でも述べたように,現在まで,三崎層群,田辺層群,備北層群,唐鐘累層など,背弧から“弧内”をへて前孤に至る各堆積場の古生態系に関してデータを収集するとともに,ほぼ同時代・同環境であるが比較的安定な堆積場である台湾中新統でもデータを収集してきた.それらを比較検討することで一定の成果につながるであろう洞察を得ている.成果を発表したもののうち一部は,その内容が認められ,学会講演会で表彰されている(日本地質学会四国支部ポスター賞3件,日本地質学会優秀ポスター賞1件).これは,本研究課題の客観的評価を反映したものと言えるだろう.さらに,最終年度である2015年度には,世界13カ国から一線の研究者が参集予定の国際研究集会 (13th International Ichnofabric Workshop) を主催し,その中で本研究の成果を口頭講演ならびに各地の巡検を通じて公表する予定である.こうして,成果を広く国際社会に発信するとともに,そこで得られた批判を積極的にフィードバックすることで,さらなる研究制度の向上に努める事ができるであろう.以上が主な理由である.
2015年度は,本研究の総仕上げとなる.そこで,現在までの調査地(例えば,三崎層群,田辺層群,久万層群,備北層群,唐鐘累層,野柳砂岩部層など)でさらなる調査を行う.さらに,研究代表者が主催する上記国際研究集会において成果を報告するとともに野外巡検を行い,実際の地層を観察しながら一線の研究者らと議論を交わす予定である.また,本年度は研究集会の準備にも幾分の時間を取られてしまったため,それが終了する次年度は研究成果の公表についても積極的に取り組んで行く予定である.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (14件)
Quaternary International
巻: in press ページ: in press
Journal of the Geological Society of Japan
巻: 120 ページ: III-IV
Spanish Journal of Palaeontology
巻: 29 ページ: 191-202