研究課題
四国山地西部から四国南西部および紀伊半島南部において下部-中部中新統の調査を行い,前期中新世の前孤域における堆積作用と生痕ファブリックについてのデータを収集・解析した.その結果,「同時代の前孤域では,活発な構造運動が古生態系に影響を及ぼしていた可能性が高い」との作業仮説を裏付ける複数の結果が得られた.一部をまとめると,以下の通りである.まず,四国山地西部に分布する久万層群の層序と堆積相は,伸張場における活発な半地溝群を崖錘/扇状地,湖,あるいは,網状河川が埋めた陸成堆積物であり,前孤内陸部での大量の砕屑物生成を示唆している,大局的に見てその下流方向に位置する前孤海盆堆積物である,三崎層群の層序,堆積相,生痕群集,生痕ファブリックは,前孤海盆域で頻繁かつ急速な堆積作用が卓越した結果,生物源堆積構造が希釈されていただけでなく,貧弱な底生群集しか成立し得なかったと考えられること,などである.また,その過程で波浪卓越型浅海域における津波堆積物の堆積相モデルの提唱に大きく寄与する成果も得られた.以上の成果は,複数の研究集会で公表した.なかでも5月14日~21日にかけて,筆者が中心にとなって開催した国際研究集会 (13th International Ichnofabric Workshop) では,13カ国38名の参加者を対象に,冒頭に記した本研究の中心的成果を講演したほか,実際に高知県南西部の下部-中部中新統露出地に赴き,野外巡検(野外討論会)を開催した.講演ならびに野外巡検とも好評を持って迎えられ,そこでなされた議論は研究成果のブラッシュアップに大きく寄与した.
2: おおむね順調に進展している
掲載予定1編を含む4編の論文を公表したほか,国際集会での講演4件を含む11件の講演を行うなど,おおむね順調に進捗していると考える.ただし,当初計画では海外で開催される国際集会にて講演する予定であったが,自身で国際集会を開催することになるという「嬉しい誤算」があったため,国外旅費に関する予算の消化が十分でなく研究期間を延長することとなった.
今までの期間を通じて得られた成果を研究集会や論文で積極的に公表することを目指す.特に2016年5月にポルトガルで開催される国際集会 (Ichnia2016) に参加し,研究成果の総まとめ的な口頭講演を行う予定である.
平成27年度には,海外の学会に出席し,総括的内容の講演を行う計画であった.しかし,この年度には研究代表者自身が中心となって,高知県で国際研究集会を開催することが平成25年に確定し,実際に5月14日~21日の期間に13カ国38名を集めた集会を開催して講演と野外討論会を行った.上記の結果,国外旅費を中心に残余が生じた.
平成28年度にポルトガルで開催される,より規模の大きい国際集会に参加し講演を行うための旅費や準備のための雑費として使用する予定である.
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Proceedings of the 2nd National Scientific Conference of Vietnam Natural Museum System
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