研究課題/領域番号 |
24540499
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐野 弘好 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80136423)
|
研究分担者 |
桑原 希世子 芦屋大学, 教育学部, 講師 (20507131)
上松 佐知子 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (50466661)
指田 勝男 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (60134201)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | PT境界 |
研究概要 |
これまでに代表者らが行ってきたPT境界珪質岩の層序,岩相,年代をレビューし,これまでの研究の不十分な点を検討したところ,PT境界珪質岩の堆積岩石学的検討が十分に行われていなかったことが明らかになった.そこで化石年代の再検討も含めて,岐阜県関市板取村ミオ谷,同山県市三尾谷,京都府福知山市菟原などの珪質岩セクションでの層序の記載,試料採集,薄片作成を行った.鏡下観察の結果および詳細な岩相層序のデータを取り込んで,わが国のPT境界珪質岩層の岩相,堆積岩石学的性質,年代をまとめ,投稿準備中である.なおこの成果の一部は日本地質学会年会(平成24年9月大阪府立大学)で講演した(佐野ほか,2012). さらに本年度は本研究課題の目的達成に適したPT境界及び関連の珪質岩セクションを探し出し,予備的な調査を行った.その結果,(1)古生代末の劣悪環境発生については岐阜県本巣市岩井谷セクション(Sano et al., 2012),(2)中生代初期の劣悪環境解消については大分県津久見市網代セクションが適していると考えるに至った.例えば後者のチャート層の場合,上位に向かって灰・灰緑色チャートから,数10 cm厚さで暗紫色・赤褐色チャートが交互する部分(約5 m厚さ)を経て,赤褐色チャートのみで構成される部分へと変化する層序が認められた.この色調変化は海洋無酸素状態の段階的解消,つまり三畳紀古世末の不安定な海洋環境を暗示するものと考えている.(1),(2)のそれぞれのセクションで予備的な調査ならびに試料採集を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の経費を用いてPT境界珪質岩の岩石薄片を作成し,それに基づく鏡下観察を行って堆積岩石学的性質珪質岩の堆積岩石学的検討を行うことができた点は,これまでの研究の不十分性を克服する第一歩として評価できると考えている.この堆積岩石学的検討の成果をも含めた,わが国のPT境界珪質岩のまとめを行えたことも研究の進展のひとつと考えている.また本研究課題の目的達成のために適した2つのセクションを見出し,予備的調査が開始できた点は大きな成果として評価できる.しかし地球化学的分析や微化石群集解析がほとんど未着手である.この点については次年度の課題としたい.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の実施状況をふまえ,平成25年度において次のような調査研究の実施を計画している. (1)岐阜県本巣市岩井谷セクションの中部ペルム系最上部~上部ペルム系上部チャート層の実測柱状図作成ならびに詳細試料採集(岩相解析,地球化学分析,放散虫化石群集解析)を行う(主に佐野および桑原).年代決定および国際対比にはコノドント化石とのクロスチェックが必要であるため,コノドント抽出用試料もあわせて採集し,上松がコノドント化石群集.年代を検討する. (2)大分県津久見市網代セクションの下部三畳系最上部~中部三畳系下部チャート層の実測柱状図作成ならびに詳細試料採集(岩相解析,地球化学分析,放散虫化石群集解析)を行う(佐野,指田,上松). (3)上記2セクションの珪質岩につい堆積岩石学的検討(佐野),ペルム紀放散虫,三畳紀放散虫化石,ペルム・三畳紀コノドントの群集解析をそれぞれ桑原,指田,上松が分担して進める. (4)網代セクションについて,全有機炭素量および有機炭素安定同位体比の測定を行う(佐野).
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究実施計画をふまえて,平成25年度研究費の主な使途を次のように計画している. (1)調査旅費:大分県津久見市網代セクションの調査(佐野:3泊4日×2回;指田・上松:3泊4日×1回). (2)調査旅費:岐阜県本巣市岩井谷セクションの調査(佐野:3泊4日×1回;桑原:3泊4日×1回;上松:3泊4日×1回). (3)設備備品費:地球化学分析用試料作成器具(自動メノウ乳鉢,ステンレス乳鉢,ハンディ研磨機)および高純度ヘリウムガスの購入. (4)珪質岩の薄片製作委託費用
|