研究課題/領域番号 |
24540500
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
佐々木 圭一 金沢学院大学, 美術文化学部, 准教授 (50340021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サンゴ礁 / 造礁サンゴ / 気候変動 / ウラン系列年代 / 生物地理 |
研究概要 |
第四紀のグローバルな気候変動に対して,サンゴ礁はどの様に分布域を拡大・縮小させてきたのか?本研究は,千年スケールの気候変動が顕著な酸素同位体ステージ3に注目して,サンゴ礁の北限に近い琉球列島喜界島に分布する4万~6万年前の化石サンゴ礁を対象に,(1) サンゴ礁堆積ユニットの認定,(2) 各ユニットを構成する化石サンゴ群集の調査,(3) 各ユニットの高精度ウラン系列年代測定を行う.そして,それらの成果に基づいて「千年スケールの気候変動に対する造礁サンゴとサンゴ礁の時空分布変化」の解明を目指している. 研究初年度は,各項目に関して以下のような成果を得ることができた.(1) 現地での詳細な地形・地質調査に加えて,熊本大学との炭素・酸素同位体を用いた地表露出面認定に関する共同研究(南條ほか2013)により,5万~6万年前の約1万年間に5つの堆積ユニットが形成されたことが明らかになった.これは,サンゴ礁域の北限近くでも千年スケールの気候変動に対応してサンゴ礁が形成されていたことを示唆する.(2) 上記堆積ユニットについて化石サンゴ群集の記載を行い,温帯域に特徴的なサンゴ種を見出した.また比較のために,世界最北のサンゴ礁である壱岐島の現生サンゴ礁で調査を行い,湾内に特定のサンゴ種が形成した温帯サンゴ礁の特徴を確認することができた.(3) 各ユニットから年代測定に適した保存状態の良いサンゴ化石の採集を行った. 8月にオーストラリア・ブリスベンで開催された第34回万国地質学会に参加して,(1) と (2) の成果を中心に研究発表を行い(Sasaki et al., 2012),今後の研究の方向性について,海外の研究者と議論を深めることができた.また,高精度ウラン系列年代測定に関するセッションに参加して,測定法に関する最新の情報を収集した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度時点での達成度は,下記の様に予定していた調査が実施できず,それに伴う研究計画の調整の関係で,やや遅れている. 当初,本年度には4万および4.5万年前のサンゴ礁堆積物を対象にしたボーリング掘削を実施する予定であった.しかし掘削予定地周辺での農地改良に伴い,露頭状況などが変化したことで掘削作業が難しくなった.それと同時に,“一時的に”新たな露頭が出現した.その露頭の正確な年代は不明であるが,分布高度や層序関係から酸素同位体ステージ3に対比される可能性が高い.そこで,ボーリング掘削作業を次年度に先送りして,新たな露頭での調査(地質柱状図の作成,年代測定用試料の採集,サンゴ群集の記載)を優先させることにした.なお,次年度に行う掘削予定地については,年度内に選定を終えて,既に地元への説明・調査許諾を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究内容 (1) サンゴ礁堆積ユニットの認定,(2) 各ユニットを構成する化石サンゴ群集の調査,(3) 各ユニットの高精度ウラン系列年代測定について,以下の計画で研究を推進する. (1) について,初年度から先送りにした,4万および4.5万年前のサンゴ礁堆積物のユニット認定のためのボーリング掘削調査を平成25年度に実施する.(2) については,計画通り,これまでに集めたデータの信頼性を高めることを目指して,造礁サンゴ分類の専門家との意見交換等を行う.(3) については,最重要課題である保存状態の良いサンゴ化石の採集を現在までに概ね終えている.平成25~26年度にかけて質量分析計を用いたウラン系列核種の分析を実施していく.予算的な制約もあり,当初計画していたオーストラリアから変更して,台湾において実験等を進めるべく,現在,調整を行っている.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に実施できなかったボーリング掘削調査にかかる予算を繰り越している.次年度は,その繰越金でボーリング掘削を実施し,それ以外については,基本的に当初の計画に従って研究費を使用する.なお,年代測定実験先をオーストラリアから台湾に変更することで旅費を減らし,研究申請予算からの減額分の調整をする.
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