研究課題
第四紀のグローバルな気候変動に対して,サンゴ礁はどの様に分布域を拡大・縮小させてきたのか?本研究は,千年スケールの気候変動が顕著な酸素同位体ステージ3に注目して,サンゴ礁の北限に近い琉球列島喜界島に分布する4万~6万年前の化石サンゴ礁を対象に,(1) サンゴ礁堆積ユニットの認定,(2) 各ユニットを構成する化石サンゴ群集の調査,(3) 各ユニットの高精度ウラン系列年代測定を行う.そして,それらの成果に基づいて「千年スケールの気候変動に対する造礁サンゴとサンゴ礁の時空分布変化」の解明を目指している.研究2年目は以下のような成果を得た.(1) 4万年前のサンゴ礁堆積物を対象にしたボーリング掘削調査を行った.その結果,これまでの露頭調査では十分に確認できなかった地層の層さに加えて,より古い4.5万や5万年前のサンゴ礁との層位関係を検討するための試料が入手できた.また,研究初年度に報告した5万~6万年前のサンゴ礁 (南條ほか2013) について新露頭の調査を行い,堆積ユニットの認定と対比について再検討を行った.そして,(2) と (3) を行うための最も重要かつ基本的な (1) 堆積ユニット区分について確立できた.その成果に従い,(3) 各堆積ユニットから年代測定用の保存状態の良いサンゴ化石の採集を行った.また,北海道大学で行われた「International Joint workshop on Coral reef environmental earth sciences」において成果の一部を発表した (Sasaki et al., 2014).このワークショップでは主にサンゴ骨格の同位体・微量元素に基づく古水温復元が議論されたが,本研究のサンゴ礁の地理的分布変遷の原因として重要な喜界島における古水温について,参加者と今後の共同研究について相談を行うことができた.
3: やや遅れている
研究初年度に実施できなかったボーリング掘削調査を2年目に行ったことの影響で,全体の研究計画はやや遅れている.特に,年代測定について実施できていない.しかし,農地改良に伴い出現した新露頭の調査を優先させたことで,堆積ユニット区分が明確になり,結果として年代測定すべき層準をより確実にして,測定試料を採集することができた.
今後は,これまでに確立した (1) サンゴ礁堆積ユニットの区分に基づき,(2) 各ユニットを構成する化石サンゴ群集の調査と (3) 高精度 ウラン系列年代測定について研究を推進する.(2) について,特に温帯域のサンゴ礁に関する知識・経験の豊富な研究者と意見交換を行い,古緯度・古水温に関する検討を行う.(3) については,最重要課題である保存状態の良いサンゴ化石の採集を現在までに概ね終えている.質量分析計を用いたウラン系列核種の分析については,予算的な制約もあり,当初計画していたオーストラリアから変更して,台湾において実験等を行う.
研究初年度に実施できなかったボーリング掘削調査を2年目(今年度)に行ったことの影響で,台湾におけるウラン系列年代測定の実施ができなかったため.実施できなかった台湾でのウラン系列年代測定にかかる予算を繰り越している.次年度は,この繰越金で年代測定を実施し,それ以外については,基本的に当初の計画に従って研究費を使用する.
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Island Arc
巻: 23 ページ: 1-15
10.1111/iar.12051