研究課題/領域番号 |
24540504
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
野牧 秀隆 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 主任研究員 (90435834)
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キーワード | 深海生態系 / 物質循環 / 炭酸固定 / 現場培養実験 / 同位体トレーサー |
研究概要 |
地球の表面積の半分以上は深海底であり、深海底の海水-堆積物間の物質の挙動は全球の物質循環に非常に重要な役割を果たしている。従来、深海底では光合成由来の沈降有機物が唯一のエネルギー源であると思われてきたが、通常の深海底でも独立栄養細菌による化学合成が行われている可能性が堆積物中の微生物遺伝子解析などから示唆されている。本研究では、「光合成に依存していると考えられていた深海生態系に、はたして化学合成の貢献はどの程度あるのか」を、さまざまな環境の深海底で炭酸固定量を現場測定することで明らかにする。 本年度は、2013年9月と11月に、赤道太平洋の水深4200mの地点において、化学合成一次生産量の定量化を行う現場培養実験を行った。深海底にコア型の培養装置をのべ15本設置し、13C-標識重炭酸のみを添加した系、13C-標識重炭酸に加えて15N-標識アンモニアも添加した系、炭素源として13C-標識グルコース、13C-標識酢酸を添加した系など、5つの基質条件を用意し、0、2、51日間、深海底で培養した。その結果、これまでの漸深海帯などでの実験結果と異なり、51日間という長期培養後でも、深海平原では無機炭酸からの有機物生産がほとんど検出されなかった。また、これまでに行った現場固定量測定実験試料の堆積物中の微生物相の解析を進め、アンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌、嫌気的アンモニア酸化細菌などの分布と炭酸固定速度との関連を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年の航海において、深海平原での現場培養実験を無事に終え、結果を得つつある。また、微生物相、機能遺伝子の解析結果も順調に蓄積されており、順調に進展しているが、結果の解釈の部分では、炭酸固定を行っている微生物群に関して予想に反する点もあり、別手法を用いての検証を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、5月及び6月に北太平洋深海平原の調査航海を行う予定であり、この航海をもって一連の現場培養実験を完了し、分析と結果の解釈に注力する。前年度得られた、深海平原での非常に低い炭酸固定速度が、富栄養の深海平原でも同一なのかどうかを検討する。同時に、これまで得られた堆積物試料の微生物膜脂質の炭素同位体比測定や、微生物の炭酸固定能に関する遺伝子解析などを進めることで、深海底での炭酸固定量を支配する要因とその生物に関して明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
航海で採取された試料が天候の理由により予定より少なくなり、分析用消耗品費が抑制された。 2014年度の航海で採取する試料の分析消耗品費に使用する予定である。
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