研究課題/領域番号 |
24540506
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
菅原 透 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40420492)
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キーワード | シリケイトメルト / エンタルピー / エントロピー / 熱測定 |
研究概要 |
本年度はガラスの溶解測定のための伝導熱量計の開発,およびいくつかのガラス試料に対するフッ化水素酸に対する試験的な測定を行った. 製作した伝導型熱量計の構造の概要は次の通りである:恒温水槽に17L, 8.4L, 4.6LのSUS容器を順に置き,その内部に銅ブロックを設置した.この銅ブロックの左右にΦ52x78のテフロン製反応容器2個を左右に並列に置いた.それぞれのSUS容器を合計4層の発泡スチロールでフタをした.恒温水槽は25.0℃になるようにヒーター出力を調整し,プロペラで撹拌させた.左右のテフロン容器のそれぞれに23wt%のHF水溶液100mlを,マグネティックスターラーで撹拌した.100Ωの金属皮膜抵抗を検量ヒーターとし定電圧電源により通電加熱するようにした.100kΩのサーミスタ合計6個を直列に接続したものをテフロンチューブに入れ,HF水溶液の温度を計測した. 製作した熱量計の温度ドリフトは6時間でおよそ±0.1mK以内,温度計測の誤差は±40μK(1σ)であった.この熱量計を用いて石英ガラスの溶解熱を測定したところ,147.2±1.0 (kJ/mol)と求まり,文献値とよく一致する値が得られた.またアノーサイトの合成結晶とDrop Calorimetryによる相対エンタルピーを測定後のガラス試料のそれぞれについて溶解熱測定を行い,298Kにおけるガラス化のエンタルピーは91.7±1.4 (kJ/mol)と求まった.この値とDrop Calorimetryによる相対エンタルピー,結晶の熱容量から,融点(1830K)におけるアノーサイトの融解熱は152.7±1.4 (kJ/mol)と計算された.高温溶解熱測定に基づく従来法では測定中のガラスのエンタルピー緩和が大きな誤差要因であった.本研究での測定から,より正確にアノーサイトの融解熱を決定することができたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度に少量のメルト試料を用いた高速EMF測定法の開発,H25年度にガラスの溶解熱量計を完成させた.これにより,現有装置の落下型熱量計と合わせてシリケイトメルトの混合エンタルピーとエントロピーを間接測定する体制が整った.ただし装置開発と試験測定に時間を要したため,混合エントロピー決定のための系統的な測定実験は進行が遅れているのが現状である.
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今後の研究の推進方策 |
NaAlSiO4ガラスおよびNepheline結晶,CaSiO3ガラスとWollastonite結晶について溶解熱測定を行い,それぞれの結晶の融解熱を決定するとともに,既報の値の比較と再評価を行う.続いてSiO2-Na2O-NaAlSiO4系,SiO2-Na2O-CaSiO3系に対して落下熱量測定を行い,測定後のガラスに対して順次溶解熱測定を実施する.得られた混合エンタルピーを関数近似してNa2Oに関する部分モル量を求め,既報のNa2O活量値と組み合わせてSiO2-Na2O-Al2O3系およびSiO2-Na2O-CaO系のメルトにおけるNa2Oの部分モルエントロピーを計算して,その組成依存性とメルト構造の関係について考察する.
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