研究課題/領域番号 |
24540508
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
林 謙一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (40124614)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酸素同位体 / 熱水鉱床 |
研究概要 |
熱水鉱床の生成に関与した水の起源は、鉱床がどのような過程を経て形成されたかを知る鍵となる。熱水鉱床で最も普遍的な脈石である石英は、鉱脈鉱床形成の初期から末期まで出現し、熱水溶液の酸素同位体の変遷を記録している。本研究ではCO2レーザー加熱法によって石英から酸素を抽出し、その同位体比を求めることにより、鉱床が形成される過程で、熱水の性質がどのように変遷したかを議論する。酸素同位体比より熱水の起源の変遷、熱水―岩石反応、熱水の沸騰など鉱床形成時のダイナミックな変化を解読することが目的である。 低硫化型金鉱床における熱水の沸騰と金の沈殿の関係を明らかにする目的で、鹿児島県菱刈鉱床の含金石英脈について現地調査を行い、熱水沸騰が生じていたと考えられる鉱床浅部レベル、具体的には山田鉱床、成泉および優泉脈、山神鉱床、祥泉脈において研究試料である含金石英脈を採集した。これらのうち、比較的従来の研究資料が乏しい祥泉脈について検討を進めてきた。研磨薄片を作成し、鉱物組み合わせや産状について記載的な研究を行い、熱水の沸騰によって生じたと考えられる放射状成長組織を有する石英や氷長石の出現から石英脈の縞状組織が生成する過程のどの部分で沸騰が起こっていたかについて検討した。CO2レーザー加熱-五フッ化臭素法による酸素抽出に使用する真空ラインの調整を行なった。ピラニ真空計、ライン加熱用の温度コントローラーなどを交換し、真空試験を実施して安定な状態で維持できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度には脈石石英の試料を浅熱水性鉱床の現地調査によって採集し、光学顕微鏡を用いた試料の詳細な観察による鉱石組織の記載を行い、次年度以降の本格的な石英の酸素同位体比の分析に備える事が重要である。同時に、CO2レーザー加熱-五フッ化臭素法による酸素抽出に使用する真空ラインの調整も順調に進んだので、ほぼ当初の計画通りに推移している。
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今後の研究の推進方策 |
菱刈鉱床の含金石英脈の石英の酸素同位体比の分析を行なう。熱水の沸騰を伴う石英縞には、氷長石・粘土鉱物など石英以外の鉱物が随伴するので、酸素の抽出に先立ちあらかじめ石英以外の鉱物を珪フッ化水素酸により溶解除去する。酸素同位体地質温度計あるいは流体包有物の均質化温度によって鉱物の生成温度を推定できれば、鉱脈を生成した熱水の同位体比が求められるので、水の起源を議論する。 新たに世界最大の金鉱床である南アフリカ、ウィットウォータースランド地域の含金礫岩に含まれる石英礫の酸素同位体比の測定を計画している。当該鉱床については漂砂鉱床とする説と、礫岩形成後の熱水の影響によって金鉱化作用が生じたとの相対する成因論が知られている。石英の酸素同位体比、とくに礫本体と礫にオーバーグローすする石英の酸素同位体比を詳細に検討する事で、上記成因論の優劣を検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に使用する消耗品を購入する。
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