研究課題
基盤研究(C)
初年度の計画として、(1)天然の岩石試料の解析、(2)出発物質の作成、(3)予察的な高温高圧実験、の3点をあげていた。これらについて順に記す。(1)天然の岩石試料の解析: 新鉱物マグネシオヘグボマイト2N4Sを含む天然の岩石試料の相平衡の記載をさらに進めた。その結果、ヘグボマイト生成にはTiO2を含む鉱物が重要な役割を担っていることがわかった。また、ルチル以外にもジルコノライトなどいくつかの鉱物との共生関係を見いだした。U, Thを含む鉱物も複数含まれており、絶対年代測定が可能であると思われる。このような産状と鉱物化学組成について研究を進め、学会発表するとともに国際誌に投稿した。(2)出発物質の作成: マグネシオヘグボマイト2N4Sを含む岩石を粉砕し、全岩粉末試料を準備した。粉砕作業には、当該科研費で購入したロックトリマが大変役に立った。さらに、元の岩石試料から、スピネルとヘグボマイトの鉱物分離をおこなった。これら「一次試料」用いて、出発物質として「全岩粉末試料」、「スピネル+ヘグボマイト粉末試料」などを、当面必要な量以上を調合した。(3)予察的な高温高圧実験: 愛媛大学の川嵜研究室に赴き、ピストンシリンダー型高温高圧実験装置で実験をおこなった。(2)で作成した試料にH2Oの量などを調整したものを出発物質とし、実験をおこなった。生成物にはヘグボマイトの消滅とスピネルの成長などがみとめられた。今後、温度・圧力・H2Oなどを変えれば、ヘグボマイトが生成できるかもしれない。現在、解析作業を進めており、その結果に基づいて次回の実験の条件を決定する。なお、この年度をもって当該装置は愛媛大学から山口大学に移管されるため、共同研究者である川嵜氏と永嶌氏により、移管に関わる様々な作業がおこなわれた。当該プロジェクトの継続のため、本科学研究費が大変役に立った。
2: おおむね順調に進展している
天然の岩石の相平衡解析については、TiO2鉱物との様々な共生関係を見いだし、新たに希少鉱物の発見もあった。この点については順調に進んでいる。ただし、多種多様な鉱物がみつかり、さらにそれらが多様な微量元素を含む鉱物であったため、化学分析に苦労した。論文投稿したが、分析値などが問題となって返ってきた。早急に解決し、再投稿するとともに、天然の解析結果を高温高圧実験の相平衡解析に役立てる必要がある。出発物質の調整は上手くいったと言える。今後、消長関係をみながら、さらに適切な出発物質の調整を続ける。初年度は予察的実験であり、計画通りうまくいった。この解析結果を踏まえ、今後、本格的な実験を始めるが、当該装置が愛媛大学から山口大学に移管となったので、装置のキャリブレーションなど基本的な立ち上げから実施する事になる。共同研究者との連携はうまくいっており、概ね順調に進んでいると言える。
初年度は新たな希少鉱物を見いだしたため、化学分析でたいへん苦労したが、24元素分析すればほぼ有意なデータが得られることがわかった。次年度はこれをふまえ、天然試料の相平衡についての論文を完成させる。初年度の予察実験の生成物の解析を進め、ヘグボマイトの安定領域を「挟み撃ち」式に追求してゆく。前回の実験を解析しては、その結果に基づいて次回の実験の条件を決定する事を繰り返す。なお、この年度をもって当該装置は愛媛大学から山口大学に移管された。装置のキャリブレーションなどからのスタートとなるが、共同研究者の川嵜氏・永嶌氏と協力して実験を進めてゆく。
当初、ヘグボマイト生成に関わる主要なTiO2鉱物はルチルだけであると考えていた。しかしながら「ジルコノライト」など、他にも多種多様な鉱物が関わっている事が判明した。希少鉱物が多く、様々な微量元素を含むほか、たいへん微細であったため、鉱物の同定と定量分析に想定外の時間を要した。このため化学分析後、構造式の計算や、過去の論文検索等に多大な時間を費やすこととなった。机やパソコンに向かっての作業が想定外に多くなり、結果的に分析に関わる出費が少なくなった。比較的大きな結晶を含む薄片1枚を犠牲にして、測定ルーチンの改良を重ねた。その結果、少なくとも24元素の測定をすれば、ほぼ100%の有意なデータが得られることが解った。今後はこのルーチンに基づいて多量の試料を研磨・分析することになる。次年度使用額は、ダイヤモンドペーストなど試料研磨用消耗品・試料輸送費・出張旅費として使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (12件) 備考 (4件)
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