研究課題
本研究課題に使用しているピストンシリンダー型高温高圧実験装置は、昨年度まで愛媛大学理学部の川嵜研究室に設置されていた。本年度より、山口大学理学部の永嶌研究室に移管された。また、研究代表者の志村は新潟大学から山口大学へ転任となった。装置の移動に伴い、本年度は新実験室を立ち上げるために、実験に関わる機器等の移設・整備等の作業が多くなった。年度内に高温高圧実験装置は無事、山口大学で再稼働させることに成功し、実験を再開する事ができた。昨年度までの愛媛大学での予察的な実験では、出発物質として、ヘグボマイトを含む天然の岩石粉末試料を主に使用していた。しかし、鉱物の成長が思わしくなく、生成鉱物の大きさがEPMA分析の分解能ぎりぎりであったほか、非平衡な組織も観察された。おそらくこれは、出発物質の鉱物群がスピネルやコランダムなど、再平衡しにくい鉱物群で構成されていたことが原因と思われる。そこで今年度は、Mg-Al-Ti系の合成ゲルを用いて実験を行うこととした。実験の結果、スピネル-ヘグボマイト-ルチルの共生が初めて確認された。志村らが新鉱物として記載した天然のヘグボマイトのモジュール数は2N4Sであった。しかし、実験生成物を解析した結果、生成されたヘグボマイトはスピネルモジュール数がもっと大きい値であると思われ、たとえば2N7Sなど、異なる結晶構造のヘグボマイトが生成された可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
ヘグボマイトは、鉄鉱床や変成岩など、世界の多様な岩石から報告されつつある。しかし、合成実験に成功した例はない。本年度までの実験のうち、1実験でヘグボマイトの生成に成功したと思われる。現在慎重に解析中であるが、確認されれば世界初となる。現在、その1実験に近い条件で追加実験を実施している。今年度が最終年度であるが、おそらく年度内にヘグボマイトの存在が確認できると思われる。
成功した実験を参考に、温度・圧力・水の量を少しずつ変えて追加実験をおこなう。なお、現状では生成された鉱物が小さく、化学分析がやや困難である。対応策として、実験時間を長くすることで鉱物をより大きく成長させる計画である。今年度内に、生成されたヘグボマイトの組成と結晶構造を明らかにしたい。
高温高圧実験には、化学的・熱的に安定な金パラジウムパイプや、白金ロジウム熱電対などの貴金属物品の使用が必須である。この価格は相場により変動する。また、貴金属合金の場合、発注数を増やしたほうが単価が下がる。これらの購入のため、26年度の実験で使用する分も含めて、25年度にまとめ買いすることにした。この目的で10万円の前倒し請求をした。最終的には、購入後に若干の残額が生じた。25年度に10万円の前倒し請求をし、26年度に使用する物品を含めて、まとめ買いをした際の残額である。したがって本来26年度に使用する分の残額であり、全体の使用計画に全く変更は無い。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (6件)
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