研究課題
ヒスイの多くが石英をほとんど含まないことから、ヒスイの主な構成鉱物であるヒスイ輝石は、必ずしも全てが 曹長石 → ヒスイ輝石 + 石英 の低温高圧反応によって生成したとは限らない。そこで、ヒスイ輝石に共生する鉱物の合成実験から、ヒスイの生成条件をさらに絞り込もうというのが本研究の当初の目的であった。しかし、本研究期間中には、試行錯誤を繰り返したあげくに合成実験が成功せず、結局は天然のヒスイの産状から生成環境を考察することとなった。本年度は特に脈状ヒスイに着目して研究を行った。国内外各地からヒスイやその関連岩を切るヒスイ脈が報告されており、ヒスイの熱水起源説の根拠の一つとされている。これらのヒスイ脈では、ヒスイ輝石は脈の壁に対して垂直に伸長していることが共通の特徴であった。それに対して、申請者らの調査によって、兵庫県の大屋地域から、脈に平行に伸長したヒスイ輝石結晶からなる脈状ヒスイが新たに見出された。ヒスイ輝石の結晶と結晶の間、あるいは結晶内にも、脈と概ね平行な方向に無数の亀裂が生じており、それらはNaに富む沸石で充填されている。母岩である曹長岩に応力がかかって亀裂が生じ、その隙間にNa,Al成分に富む流体が浸入し、ヒスイ輝石が結晶化して細脈状ヒスイが生成したと考えられるが、その間ずっと同じ方向の応力を受け続けていたため、ヒスイ輝石が脈に平行に伸長したものと考えられる。ただし、この大屋地域の脈状ヒスイ中からは生成時の温度や圧力などを知るための指標となるSrやBaに富む鉱物は見出すことができなかった。今後も調査を継続してサンプルを増やして、こうした指標鉱物を探索するとともに、合成実験の手法を確立して、再度ヒスイ生成の謎の解明に取り組むすべく、研究計画を練り直して再トライしたいと考えている。
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