研究課題
ピナツボかんらん岩捕獲岩4試料のかんらん岩内部の角閃石および母岩とかんらん岩の間に観察される角閃岩selvageの角閃石の微量元素・Sr-Nd同位体組成を求めた。始源マントル規格化図において、かんらん岩内部の角閃石は液相に農集する元素に枯渇し、流体で移動しやすい元素(Pb・Rb・Ba・U・Sr)に富むパターンを示す。Sr-Nd同位体比は母岩デイサイトより枯渇した特徴(低いSr、高いNd同位体比)を示す。角閃岩selvage中の角閃石は、母岩デイサイト中の低Al2O3(<10wt%)角閃石と同じ主成分・微量元素組成を示し、Sr-Nd同位体比も母岩デイサイトの組成領域内である。角閃石selvage中の角閃石のこれらの特徴から、selvageはかんらん岩が母岩に取り込まれた際に、かんらん岩表面に母岩デイサイトから角閃石が晶出して生じた事がわかった。かんらん岩中の角閃石はそれらの組成の特徴から、母岩デイサイトから晶出したものでは無いと推測される。かんらん岩中の角閃石の微量元素組成と角閃石/流体の分配係数から求めた流体組成は、変質した海洋地殻・かんらん岩とそれらと流体間の分配係数から求めた流体の組成と一致した。かんらん岩内部の角閃石のSr-Nd同位体比は、枯渇したマントル成分と南シナ海の海洋玄武岩の混合線上にプロットされた。これらの微量元素とSr-Nd同位体比の特徴は、ピナツボ火山下のマントルウェッジに沈み込んだ海洋地殻・かんらん岩由来の流体が付加したと考えることで説明可能である事がわかった。この推測は、ピナツボ捕獲岩鉱物中の流体包有物が、塩水を含み(Kawamoto et al., 2013)やハロゲン元素組成が堆積物中の間隙水や蛇紋岩の物と類似し(Kobayashi et al., 2013)沈み込むスラブ由来とされる事と調和的である。以上の成果は、国際・国内学会で報告された。
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