研究課題/領域番号 |
24540513
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
太田 努 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 助手 (80379817)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リチウム / 水流体 / カンラン石 / 同位体分別 / 高温高圧実験 / 二次イオン質量分析装置 / 沈み込み帯 |
研究概要 |
本研究では,地球表層由来物質とマントル物質との化学的相互作用を理解するために,代表的マントル鉱物であるカンラン石と水流体の間でのリチウム分配・同位体分別のパラメータを実験的に明らかにする. 合成実験にはピストンシリンダー型高圧発生装置を用い,900℃,2GPaの温度圧力条件を26~312時間維持した.合成したカンラン石は,組織観察の後,主要元素(FE-SEM-EDX),微量元素(SIMS)の定量分析とリチウム同位体組成(HR-SIMS)を分析した. 合成カンラン石のリチウム濃度はマントルカンラン石の数倍程度で,結晶間不均質が顕著だった.微量元素のうち,特にアルミニウムの濃度は,結晶内不均質が確認された.リチウム同位体組成については,結晶間不均質が顕著で,粗粒な結晶については結晶内不均質も確認された.結果として,カンラン石―水流体間におけるリチウム分配は平衡状態に至らず,典型的なマントルカンラン石と水流体との間のリチウム同位体分配を議論できる成果は得られなかった. 一方,元素濃度およびリチウム同位体組成の相関を検討した結果,カンラン石の成長とともに,リチウム濃度は上昇,アルミニウム濃度は減少,リチウム同位体比は減少していた.これは, (1)リチウムはアルミニウムと対になってカンラン石に固溶されるわけではないこと,(2)カンラン石の成長とともに,リチウムとアルミニウムの置換を含む,元素の再分配がおこり,同時にリチウム同位体の分別も起こったことを示唆する.(1)は,研究計画の段階での予測とは異なる,カンラン石へのリチウムの固溶機構があること,(2)は,リチウム同位体分別が,他の元素の挙動に影響されていることを示しており,今後もデータを蓄積して,これらの詳細を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,まず,典型的なマントルカンラン石と同程度にリチウム含有量が低く,かつリチウム同位体組成が均質なカンラン石を合成して,カンラン石―流体間におけるリチウムの分配・同位体分別のパラメータを求める.この結果を踏まえて,得られたパラメータの温度依存性や微量元素組成との関連性を検討する予定であるが,リチウム同位体組成が均質な低リチウムカンラン石の合成が実質的には成功していないため,諸々のパラメータの最終決定にまでは至っていない. また,低濃度水素の定量分析のための標準物質準備が完了していないため,合成カンラン石の水素濃度定量は実現していない.
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今後の研究の推進方策 |
合成実験のデザインを見直し,諸々のパラメータ決定に適した化学組成を持ち,かつ粗粒なカンラン石を合成することを目指すとともに,二次イオン質量分析装置を用いた,空間分解能(あるいは深さ分解能)のより高い分析を実現する必要がある.粗粒なカンラン石を高空間分解能で分析することで,本研究が目指していた多元素二次元マップの作成,それに基づく物理化学パラメータの決定が可能になると考えられる. また,合成カンラン石の水素濃度定量を実現させるべく,低濃度水素の定量分析のための標準物質準備を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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