研究課題
マントルウェッジにおける流体による元素の移動・濃集過程を検討するために,島弧マントルに由来するかんらん岩捕獲岩中に観察される交代作用についての検討と,それに関連した流体包有物の解析,また,マントルウェッジに放出された流体の初生的性質を解明するために,変成岩に伴うマントルかんらん岩の解析をおこなっている。平成25年度は,変成岩に伴うかんらん岩に見られる流体交代作用の地球化学的な解析を重点的におこない,オフィオライトのし上げ時に下位に形成されるメタモルフィックソールからH2O流体が付加され,改変を受けていることが確かめられた。また,極域ウラルで採取した高圧変成岩に伴うかんらん岩体では大規模に含水鉱物が形成されていることが確認された。特に,緑泥石や角閃石類の形成が顕著で,変成岩の形成に伴って放出されるH2O流体による岩石学的な改変を捉えるために,化学的な解析を始めたところである。マントルウェッジ上部のマントルに由来するかんらん岩捕獲岩中の流体包有物については,カムチャツカ弧のかんらん岩中に観察されたH2O流体の解析を引き続きすすめている。特に,H2O流体の塩濃度(NaCl eq.)を決定し,大規模に交代作用を受けているかんらん岩とそうでないもの,また,交代作用を引き起こした物質(H2O流体もしくはH2Oに富む珪酸塩メルト)の違いにより,観察されるH2O流体の塩濃度組成が系統的異なることがわかるなど,成果が出てきているところである。
3: やや遅れている
カムチャツカ弧のアバチャ火山に産するかんらん岩捕獲岩については問題が無いが,シベルッチ火山の追加試料のロシア側からの輸送が遅れており,追加の解析が進んでいない。また,フィリピン,ルソン弧のイラヤ火山の現地調査にH25年度は行くことができなかった。しかし,H26年度5月に現地調査の計画があるため,十分挽回できると考えている。オフィオライト底部のかんらん岩を用いた解析は順調にすすんでおり,最終年度であるH26年度中の論文化を目指す。
マントルウェッジ上部で観察される流体による元素濃集過程については,これまで得られたデータに加えて,新たにフィリピン,ルソン弧の火山フロント下マントルに由来するかんらん岩捕獲岩のものを解析することで,そのプロセスについてより包括的な議論をする。両者の比較検討をおこない,火山フロント下マントルでの流体交代作用について一般的なモデルの提唱を目指す。また,オフィオライト底部かんらん岩に記録されていると考えられる,初生スラブ流体による元素移動に関しては,既にいくつかの異なる深度に由来すると考えられるかんらん岩体(オマーンオフィオライト,トルコのメルシンオフィオライト,北部ウラル地域のかんらん岩体)から試料を採取しているので,その解析をすすめる。
研究の遂行に必要な物品が残額(205円)で購入できなかったため。次年度配分予定の物品購入費とあわせて使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)
Lithos
巻: 196-197 ページ: 198-212
10.1016/j.lithos.2014.03.008
Contributions to Mineralogy and Petrology
巻: 167 ページ: 974
10.1007/s00410-014-0974-x