最終年度:前年度自動ステージを用いてマルチキャピラリーX線レンズ(MCX)により集光したガンマ線の焦点サイズと形状を測定した。この時ガンマ線検出器としてエネルギー分解能の低い比例計数管を用いたためエネルギースペクトルにおけるバックグラウンドの影響のためガンマ線焦点サイズを最終的に確定させるには至らなかった。今年度はエネルギー分解能の高い半導体検出器を用いてガンマ線焦点サイズを確定することを試みた。半導体検出器の動作確認までは行えた。しかし、京都大学原子炉実験所は今年度原子力規制委員会による試験研究用原子炉の適合確認の審査期間にあたり、原子炉の運転停止及び顕微メスバウアー分光器が設置してあるトレーサー棟での密封線源を用いた実験停止となっており、この措置は現在も続いており再開の目処はたっていない。その影響で十分な測定時間ができず、半導体検出器を用いたガンマ線焦点サイズ確定は中断せざるを得なかった。 研究期間全体:MCXを用いて、鉄含有鉱物中の鉄の価数定量分析のための顕微メスバウアー分光器を作成し、ビーム評価を行った。ビーム形状と半値幅を測定したところ、14.4keVのガンマ線半値幅は約400μm、ビーム形状は同心円状の強度分布を持つ等方的な良質な焦点であることがわかった。しかしエッジ走査により得た半値幅400μmと二次元検出器による半値幅150μmの間には大きな差があったため、半導体検出器を用いた焦点サイズ測定を目指したが上記の理由のため最終的な焦点サイズ確定と、多数の鉄含有鉱物の顕微メスバウアースペクトル測定には至らなかった。しかし、今後の顕微メスバウアースペクトル測定に向け、黒雲母、磁鉄鉱、赤鉄鉱、普通輝石などの主要な鉄含有鉱物の定方位薄片の顕微でないメスバウアースペクトル測定を行うことにより、単結晶薄片を用いた顕微メスバウアースペクトル測定の基礎データを確認している。
|