研究課題/領域番号 |
24540520
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
松井 正典 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 特任教授 (90125097)
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研究分担者 |
肥後 祐司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (10423435)
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キーワード | 放射光実験 / スピン転移 / 超音波測定 / フェロペリクレイス / 超高圧高温 / 下部マントル |
研究概要 |
昨年度に合成した(Mg0.8Fe0.2)O、(Mg0.5Fe0.5)O焼結体を用いて、超音波実験を行った。フェロペリクレースのスピン転移の観察のためには少なくとも40GPa以上の超高圧を発生する必要があるため、焼結ダイヤモンドを2段目アンビルに用いる川井型高圧発生装置による加圧実験を行った。このような焼結ダイヤモンドを用いた超音波測定は、従来研究例のない、真に最先端の研究テーマである まず、フェロペリクレース試料を超音波実験セルに入るように、YAGレーザーの最適化を行ない直径0.4mm、長さ0.5mmの円筒形に加工整形した、さらに超音波の散乱を抑えるために両端を鏡面研磨した。実験は大型放射光施設SPring-8のBL04B1に設置の川井型高圧発生装置SPEED-Mk2を使用した。高温高圧下の試料観察にはX線ビームモニターと高分解能C-MOSカメラを用い、超音波エコーの測定には任意波形発生器、低ノイズポストアンプ、デジタルオシロスコープを使用した。 合計8回の実験を行い、高圧セルの最適化などを行った結果、最大50GPa、800℃の高温高圧下の発生と同条件下での超音波エコーの測定に成功した。しかしながら、試料長測定に必要なX線ラジオグラフィー像が不鮮明であり、残念ながら弾性波速度の算出までには至らなかった。今後、上記のX線ラジオグラフィー像の鮮明化対策(ガスケット材の最適化)などを行うことで、問題は克服されると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はフェロペリクレース焼結体の合成・下部マントル条件での超音波技術の開発・フェロペリクレース試料の超音波速度測定と、大きく3つの開発要素があるが、すでに前記2つの開発を終了している。最終目的であるフェロペリクレース試料の超音波速度測定に関しても、部分的な改良により問題は克服されると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で行う、超高圧領域(圧力40 GPa以上)でのマルチアンビル高圧装置を用いた放射光超音波測定実験は、従来の超硬(炭化タングステン)アンビルによる測定では実現不可能であったが、申請者らが最近開発した焼結ダイヤモンドアンビルを用いた超音波測定技術を用いることにより、このような超高圧下での弾性波速度速測定によるスピン転移の検出と弾性的な性質の変化を捉えることがはじめて可能となる。しかしながら、従来のマルチアンビル型高圧発生装置による超音波測定の圧力上限の2倍を超える非常に高い圧力が必要であり、高圧力セルの更なる最適化、超高圧高温装置による放射光超音波実験等々、様々な技術開発が必須である。 加えて(Fe0.2Mg0.8)Oあるいは(Fe0.5Mg0.5)Oの高スピンから低スピン状態へのスピン転移においては、室温において明らかになったように、中間に混合スピン状態がかなりの圧力幅に渡って存在する。従って、下部マントル内における鉄イオンのスピン転移の挙動を詳細に解析するためには、超高圧高温下における実験試料についての精密な超音波速度測定が求められる。 このように本実験の遂行にはかなりの困難が存在するが、本実験で使用する超高圧発生装置(SPEED-MkII)ではこれまで60GPaを超える圧力発生の研究実績が多くあり、故に充分実現可能と考えている。今後は、高圧実験セルをより最適化し、精密な弾性波速度変化のデータ取得を試みる。本研究を行うためにはSPring-8における放射光実験が欠かせないが、研究分担者(肥後祐司)を代表者として2014A期の実験課題がすでに認められており、今後も継続的な実験が可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね計画通りであったが、若干の金額(6万円弱)が次年度使用として持ち越した。 全額消耗品費として使用する。
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