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2012 年度 実施状況報告書

原生代環境下における水ー岩石鉱物相互作用とその後の地球環境形成に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24540522
研究種目

基盤研究(C)

研究機関岡山理科大学

研究代表者

小林 祥一  岡山理科大学, 理学部, 教授 (20109739)

研究分担者 坂本 尚史  千葉科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60098580)
草野 圭弘  倉敷芸術科学大学, 芸術学部, 教授 (40279039)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード原生代 / 地球環境 / 水と岩石 / 人工風化 / 海洋の化学組成
研究概要

近年、地球誕生初期の特に原生代以降の地球環境が解明されつつあることから、本研究では、原生代初期の酸素が大気中に供給されはじめた頃の地球環境を再現し、水(特に降雨)―岩石鉱物間の相互作用と、その後の地球環境形成への影響について、実験的に明らかにすることを目的としている。具体的には、A.原生代環境下での初期地球表面を構成する岩石鉱物の風化変質に伴う物質の移動、B.溶脱元素の種類および量と海洋資源との関係、C.主成分および微量成分の溶脱、および二次生成物への選択的吸着、D.当時の二酸化炭素含有雨水と岩石鉱物との相互作用の検討結果から、現在の地球で今後予想される二酸化炭素増加に伴う岩石鉱物(含石材等)への影響の4点についてである。
今年度は主に、Aの研究を行うための装置作りと試料の調製を行った。原生代初期の環境下で風化変質実験を行うために、当時の地球環境を再現するための装置作りを行った。今回の装置作りで最も検討を要したところは、低酸素状態の再現および外部からの操作性であった。そのためアクリル板を用いグローブボックスを製作し、その中に風化変質実験を行うための装置を入れることにした。実験条件を一定にするため、実験開始後は装置を大気にさらすことをできるだけ避けなければならないことから、現在実験操作のシミュレーションを兼ねて予備実験を行っている。予備実験は本実験との比較検討を行うためでもある。次年度に向けて上述したAの実験を開始する見通しができた。
一方風化実験に用いる試料は、初期地球で広く世界に分布していたとされる玄武岩で、このうち初生マグマに近いピクライト質玄武岩である。本岩が見られる静岡市葵区で地質調査を行い、露頭で玄武岩の観察、試料採取を行った。実験用試料は観察比較が容易であること、実際の岩石片での変化を見るために、片面を研磨し、10x8x5mm大にカットしたものを準備した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

低酸素状態での実験を行うため、アクリル製のグローブボックスを製作した。しかし、この中に実験装置(ソックスレー抽出器、pHメーター、試料採集用器具等)全体を入れる関係で体積(100 x 100 x 80cm)が大きく、また温度制御用熱電対およびリボンヒーターにつなげるためのコードを外部から入れるための窓、さらに窒素ガスをフローするための窓が開けられているため、窒素による大気の置換が思うように行うことができなかった。そのため機密性を高めると同時に、グローブポックス内に脱酸素剤を入れるなどの検討を行った関係で、実験開始が当初の計画より遅れている。

今後の研究の推進方策

今後平成24年度に得られた検討結果、試料の準備状況から、以下3点を行うことを考えている。
1)まず実験装置の改良を行う。主な改良点は現在のところ酸素分圧が0.05程度までしか下がらないことから、装置の気密性などの改良を考えている。また、ソックスレー抽出器の抽出部(反応部)内に人工雨が満たされている時と流れ落ちたときとでは、若干温度が変動するので55℃±数℃以内になるように調整する。2)水―岩石および鉱物との反応実験を本格的に始める。初期地球の主な地殻構成物質玄武岩質岩を対象とし、水―岩石との相互作用について検討する。反応温度は地表付近の温度の範囲内で一定とする。実験期間は24カ月以上を考えている。岩石鉱物試料および試料溶液のサンプリング間隔は、3日~数カ月ごとに行う。人工雨の種類として、原生代大気組成と平衡な人工雨としてCO2飽和水、さらにpH4の硫酸、塩酸および硝酸溶液、蒸留水(参照用)を考えている。3)試料溶液の検討:定期的に採取する溶脱元素を含む試料溶液はICP-MSにより主要、微量元素の分析を行う。測定対象元素は主成分ではSi, Al, Ca, Na, K, Fe, Mg, Mnなど、微量元素ではSc, Zn, Sr, Co, Y, Pb, Rb, Ce, La, Ba, Sm, Niなどで標準試料の準備も行う。なお、分析限界を考慮し、一部は外部に分析依頼する予定である。4)野外での変質状況の調査行い、採取した岩石鉱物試料の風化状態の観察およびサンプリングを行い、水簸およびピッキングにより変質鉱物の分離を行う。

次年度の研究費の使用計画

本研究を行うために重要な低酸素状態での実験は、今回の実験にあわせて作成したアクリル製のグローブボックス中に、実験装置全体を入れ、大気を遮断して行うことにあった。「現在までの達成度」で報告しましたように、ボックス内を低酸素状態にすることに時間がかかり、実験の開始が遅れた。そのため、当初予定していた分析依頼、データ処理のためのアルバイトを依頼できなかったために、「収支状況報告書」の「次年度使用額」が生じた。次年度は、この費用を本来の使用目的にあわせて使用する。
次年度交付される予定の研究費では、上の「今後の研究の推進方策」で述べたように、装置の改良、反応後得られる岩石試料および試料溶液の走査型電子顕微鏡、X線回折、EPMA, ICP-MSによる検討を行う。また同時に、鉱物間の相互作用を検討するために、研究の対象としている玄武岩だけでなく、個々の鉱物や火山ガラスを対象とした人工風化実験を開始する。さらに実験結果との比較のために野外での調査を行い、特に岩石鉱物の風化状態の観察およびサンプリングを行い、鉱物化学的な検討を行う。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Shimazakiite-4M and shimazakiite-4O, Ca2B2O5, two polytypes of a new mineral from Fuka, Okayama Prefecture, Japan2013

    • 著者名/発表者名
      I.Kusahi, S.Kobayashi, Y.Takechi, Y.Nakamuta, T.Nagase, K.Yokoyama, K.Momma, R.Miyawaki, M.Shigeoka and S.Matsubara
    • 雑誌名

      Mineralogical Magazine

      巻: 77 ページ: 93-105

    • DOI

      10.1180/minmag.2013.077.1.09

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Luminescence spectra of chabazite-Ca, a zeolite mineral.2012

    • 著者名/発表者名
      S. Kobayashi, Aierken Sidike and N. Yamashita
    • 雑誌名

      Physics and Chemistry of Minerals

      巻: 39 ページ: 465-470

    • DOI

      10.1007/s00269-012-0500-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 島根県銅ヶ丸鉱山および滋賀県御池鉱山産ハイドロウッドワード石の化学組成2012

    • 著者名/発表者名
      大西政之・下林典正・小林祥一
    • 雑誌名

      岩石鉱物科学

      巻: 41 ページ: 122-128

    • DOI

      10.2465/gkk.120329

    • 査読あり
  • [学会発表] 島崎石(shimazakiite)のポリタイプの結晶構造2012

    • 著者名/発表者名
      門馬綱一、草地功、小林祥一、武智泰史、中牟田義博、長瀬敏郎、横山一巳、宮脇律郎、重岡昌子、松原聰
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2012年年会
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 初期地球環境下での降雨による玄武岩質岩の風化変質2012

    • 著者名/発表者名
      藤高志帆、鑛山明希子、小野坂侑香、小林祥一、猶原順
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2012年年会
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 岡山県高梁市布賀鉱山産calciborite2012

    • 著者名/発表者名
      小林祥一、大谷和磨、安藤珠美、草地功、田邊満雄
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2012年年会
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 岡山県高梁市布賀鉱山産roweite2012

    • 著者名/発表者名
      小林祥一、戸田雄大、玉置みさき、草地功、岸成具、田邊満雄
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2012年年会
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 大分県木浦鉱山地域産タルメッシ石2012

    • 著者名/発表者名
      大西政之、下林典正、岸成具、田邊満雄、小林祥一
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2012年年会
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 鉱物資源とその産状2012

    • 著者名/発表者名
      小林祥一
    • 学会等名
      第72回原料専門委員会
    • 発表場所
      岡山セラミックセンター 岡山県備前市
    • 年月日
      20120907-20120907
    • 招待講演
  • [学会発表] Artificial chemical weathering of basaltic rock under the earth surface conditions of the Proterozoic era.2012

    • 著者名/発表者名
      S. Kobayashi, S. Fujitaka. and J. Naohara
    • 学会等名
      34th International Geological Congress
    • 発表場所
      Brisbane, Australia
    • 年月日
      20120805-20120810

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公開日: 2014-07-24  

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