研究課題
本研究では、原生代初期の酸素が大気中に供給されはじめた頃の地球環境を再現し、水(特に降雨)―岩石鉱物間の相互作用と、その後の地球環境形成への影響について、実験的に明らかにすることを目的としている。具体的には、A.原生代環境下での初期地球表面を構成する岩石鉱物の風化変質に伴う物質の移動、B.溶脱元素の種類および量と海洋資源との関係、C.主成分および微量成分の溶脱、および二次生成物への選択的吸着、D.当時の二酸化炭素含有雨水と岩石鉱物との相互作用の検討結果から、現在の地球で今後予想される二酸化炭素増加に伴う岩石鉱物(含石材等)への影響の4点についてである。昨年度製作した,原生代初期の環境下で風化変質実験を行うための装置を用い,静岡市葵区で採取した初生マグマに近いとされるピクライト質玄武岩を対象に風化実験を開始し進めている.実験は,解放系に改良したソックスレー抽出器を用い,50℃に保った抽出部に準備した10x8x5mm大の玄武岩試料をいれ,人工雨(pH=4の硫酸,硝酸,塩酸,そして二酸化炭素飽和水および蒸留水)をそれぞれの人工雨用に準備した抽出器上部から150ml/dayで滴下し行っている.抽出器で反応した人工雨は一日約3回,サイホンの原理で流れ落ちる.この試料溶液を,抽出部で反応した玄武岩片試料と共に鉱物・化学的に検討している.試料溶液はICP-MSで分析を行い,岩石試料と人工雨との反応によって溶脱しやすい元素を知るために,試料溶液中の溶脱した各元素と,抽出部に実験開始時に入れた未処理の岩石試料中に含まれる各元素とのモル比を求め検討している.玄武岩試料は実体顕微鏡,SEM(走査型電子顕微鏡)で表面観察をし,EPMA(電子線による微小部分析装置)で表面の化学組成の変化を調べている.これまでに6ヶ月間行った実験結果が得られている.
3: やや遅れている
本実験は原生代の環境,すなわち低酸素状態で行うことを目的としている.当初,アクリル製のグローブボックス内を窒素ガスで充填することで低酸素状態を再現できると思っていたが,この方法では思うように酸素濃度を下げることができなかった.研究がやや遅れている理由はこれを解決することに時間を費やしたことが原因です.
低酸素状態での風化実験は開始後まだ半年程度であることから,この条件下での風化実験を今年度も続けて行っていく.期間の増加に伴って順次得られる試料溶液および人工的に風化させた岩石片試料について,試料溶液はICP-MSによる分析を行い溶脱しやすい元素の解明を,また玄武岩風化試料については,実体顕微鏡およびSEMで表面観察を,EPMAで表面の化学組成の変化を調べてゆきたい.これらの基礎的データをもとに,「研究実績の概要」に示したBおよびCについての検討を行ってゆきたい.これまで得られたデータと地球環境形成との関係を考えるために,国内外の研究会,学会に参加し,例えば海洋資源関係の研究者から,海底資源生成のメカニズムに関する情報を得るなど,今回の研究結果との関連性について検討してゆきたい.
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
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