研究課題/領域番号 |
24540523
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
飯高 敏晃 独立行政法人理化学研究所, 戎崎計算宇宙物理研究室, 専任研究員 (60212700)
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キーワード | 地球惑星科学 / 惑星大気 / 希ガス / キセノン化学 / 高圧化学 / マントル / シリコン / 結晶構造探索 |
研究概要 |
希ガスは化学的に安定・不活性なので惑星大気誕生以来その存在比が一定であると考えられてきた。ところが、現在の地球大気とその原材料物質とされるコンドライト隕石とを比較すると、現在の地球大気中のXeの存在比が他の希ガスに比べて著しく低い。重い元素であるXeは宇宙に散逸せず地球に留まっていると考えられるが、その行方は依然わかっていない。Xeが貯蔵されている場所については地殻、マントル、外核、内核などが考えられるが、本年度は地球で大きな体積比率をしめるマントル層に貯蔵されている可能性を探った。地球深部にあるマントル層は、おもにMg2SiO4、MgSiO3などの珪酸塩鉱物から構成されている。これらの鉱物とXeが反応して化合物を作る可能性を探索するために、本年度はXe原子とSi原子のみからなる単純なXe-Si系の高圧下における結晶構造を第一原理結晶構造予測法により探索した。その結果、高圧力下でXe原子とSi原子が化学結合して作る結晶構造が見つかった。Siはマントルを構成する三つの代表的元素の一つであり、Si原子とXe原子が高圧下で結晶を作る可能性があることを見いだしたことは、「消えた元素」Xeの行方を理解する上で重要な一歩である。ただし、この結晶構造が最安定であるという保証はないので、より安定な構造がないか確認することが必要である。また、Xe,Si以外の原子(例えば酸素原子)が共存したときに、この酸素が結晶構造の安定性に与える影響を調べることも重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Xe-Si系において高圧下で安定な結晶構造候補を特定することができた。このことは、消えた元素Xeの行方を理解する上で重要な一歩である。ただし、この結晶構造が最安定であるという保証はないので、より安定な構造がないか確認することが必要である。また、Xe,Si以外の原子(例えば酸素原子)が共存したときに、この酸素が結晶構造の安定性に与える影響を調べることも重要である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度見つけた結晶構造候補より安定な構造がないか確認する。また、Xe,Si以外の原子(例えば酸素原子)が共存したときに、この酸素が結晶構造の安定性に与える影響を調べる。時間に余裕があれば、外核(液体鉄)へのXeの溶解の可能性についても考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度計算の支援のために海外の研究者を招聘する予定であったが、相手方の都合によりキャンセルされたため残額が生じた。 そのため次年度に招聘する予定である。もともと次年度に予定されている予算は計画通り使用する。
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